2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23350085
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 貴義 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60270790)
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Keywords | 分子ローター / 強誘電体 / クラウンエーテル / 超分子 |
Research Abstract |
以下の項目について検討を行った。 1.分子のfilp-flop運動に基づく強誘電性発現 既にm-fluoroanilinium/dibenzo[18]crown-6において、分子回転に伴うdipoleのflip-flopを利用した強誘電体を実現している。それを基に、他のアニリニウム等の回転子および種々のクラウンエーテルの組み合わせから結晶を作製し、分子回転および強誘電性について系統的に精査した。対アニオンは主として[Ni(dmit)2]を用いた。filp-flop運動に基づく誘電応答を示す系を複数見出した。 2.ケージ内の分子回転に基づく強誘電性発現の探索 特定の回転軸をもたずに、ケージ状の超分子構造の中である程度自由な回転を発現する系を探索する。クラウンエーテルにサンドイッチされた空間にpyazineが包接された系をターゲットとし、複数の結晶を得た。プロトンを介してpyazineはクラウンエーテルと弱く水素結合しており、これを軸としてflip-flop運動や振り子運動を示し、外部電場に応答する事を明らかにした。 3.球状分子の回転に基づく強誘電性発現 アダマンタンを利用した回転が可能な新規分子系を開拓した。まず、フルオロアダマンタンアンモニウム(FADH)の単純塩の合成を開始した。 4.ポテンシャル曲線の設計による分極軸の複数化 回転子がある程度高い対称性をもつFDAHを用いて3極小ポテンシャルを実現した。誘電応答にリラクサー的な傾向がみられ、精査を開始した。 5.複合回転系の実現および6.回転子への機能付与と複合機能化 この2項目については、予備実験から通常の分子設計では実現が困難である事が判明したので、新たな分子設計に向けた検討を開始した。但し項目5について、fluoroadamantane carboxylic acidの銅錯体系については有望であると判断し、今後検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はほぼ計画通りに進捗している。そのなかで、リラクサー類似の応答を見出すなど、当初は予測していなかった結果も得られている。一方で、いくつかの研究項目において、改めて分子設計を行う必要性が生じるなど、やや進捗が遅れている部分がある。予定よりも進捗している部分が多く、全体的には、おおむね順調に進展していると判断した
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね順調に推移していることから、平成24年度についても殆どの研究項目について、当初の予定通り研究を遂行していく予定である。ただ、リラクサー類似の応答が見られた事から、この部分についてより精査することを計画している。リラクサーは応用面においても重要な材料であり、検討する必要性がある。一方、項目6および7については分子設計の進捗状況を見つつ、これらに費やすエフォートをリラクサー研究に振り向ける事も考慮する。それにより、研究全体としてよりインパクトのあるものに仕上げていく
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