2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23350095
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 長夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60124575)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近赤外色素 / フタロシアニン / 光化学治療 / 太陽電池 |
Research Abstract |
太陽電池色素・光化学治療用増感剤・疾患診断センサー用マーカー・偽造紙幣防止用インクなど、様々な応用が期待できる近赤外領域に強い吸収を持つ色素の開発・およびその機能解明を行なった。以下にその具体例を示す。 吸収波長の近赤外化にあたっては、環自体の拡張またはベンゼン環などの芳香環を縮環するアプローチが有効である。しかし、前者においてフタロシアニンの化学の世界ではその合成の困難さから、約40年前に報告されたスーパーフタロシアニン以降、系統的な報告はなされていない。そこで現代の分光学的手法を用いてスーパーフタロシアニンの物性の再考察を行い、それを元に新たな環拡張フタロシアニンを提案、実際に合成し近赤外領域に強い吸収を持つことを見いだした。後者については、屋根型の連結ユニットを持つフタロシアニン二量体を合成した。この分子の連結ユニットは熱によりアントラセンへと変換されることから、フタロシアニンユニット同士の相互作用が期待できる。実際に、熱による吸収帯の大幅な長波長化が見られ、仮説が正しいことを証明した。その他、フタロシアニンをベースとした新規色素として、金を鋳型としたトリフィリン型化合物、ポルフィリンとフタロシアニンのハイブリッド分子、フラーレンを連結したフタロシアニンなどの開発に成功した。 また、生体系への応用に必須である、水溶性を持つフタロシアニン類の開発についても進めており、現在のところ鉄またはコバルトを含む水溶性フタロシアニンの開発を行なっている。 これらの結果はいずれも国際的に高い評価を得ており、いずれも一流の国際誌へ掲載済み、または掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度も引き続き申請者の得意とする分光学の知見を駆使した精密なデザインを行なうことで、様々な新規分子の開発に成功した。いずれも比較的容易に合成ができるものであり、有機合成を専門としない研究者に対しても興味を持たれやすいのではないかと考えている。また、本年度は近赤外色素の応用にあたり、一般に強く求められている水溶性の獲得にも成功しており、機能性近赤外色素の開発におういて必要な様々な指針を発信できた。 今後、国内外の研究者とのディスカッションを通し、真に応用可能な機能性分子の開発に向け、研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の事に重点を置いて研究を推進する。 1. テトラアザポルフィリンのリン錯体を合成する。テトラアザポルフィリンはフタロシアニンのイソインドール部位をピロールに変換した類縁体である。最近の予備的な検討で、テトラアザポルフィリンへリンを挿入することで、可視領域の幅広い範囲に強い吸収を持つことを見いだした。そこでフタロシアニンの知見を生かし、硫黄を導入することによる長波長化を目指す。近赤外~可視の幅広い領域(約400~1100 nm程度)に強い吸収を持つ分子はほとんど知られておらず、有機太陽電池の新たな材料として期待できる。 2. 近赤外領域に強い吸収を持つフタロシアニン類の光増感特性を明らかとし、15, 16族重元素を含む新規誘導体を合成する。光化学治療用増感剤として用いるに当たっては、強い一重項酸素発生能が必要不可欠である。これまで合成した化合物について光増感特性を見積もり、その有用性を明らかとする。特に、近赤外に強い吸収を持つフタロシアニンリン錯体については、光増感能の向上には重元素の導入が有効とされる点を踏まえ、置換基の硫黄をセレン、テルルへ変換した化合物を合成することで、近赤外強吸収能の保持および光増感能向上を目指す。
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Research Products
(70 results)