Research Abstract |
本研究では動的荷重を受けるコンクリート構造物の破壊進展機構の解明に向けて,動的全視野計測手法の構築,部材の動的性能に及ぼす材料劣化の影響評価,動的荷重を受ける数値解析手法の構築,の3つに大別して検討を行った。 まず,動的全視野計測における検討では,高速度カメラを用いた物体表面における変形挙動の面的計測に関する基礎研究として,同一条件で低速撮影した静止物体表面の画像間におけるばらつきについて検討した。輝度値分布が大きい場合は,100pixelを基調とした場合における見かけのひずみが約100μであった。一方,輝度値分布が狭い範囲にある場合では,300μ以上の見かけのひずみを呈した。さらに,輝度値が255になった場合には,局所的に見かけのひずみが著しく大きくなる場合がみられた。これは撮影時にホワイトバランスが崩れることで,撮影前後のサブセットパターンが一致しなくなることが原因としで考えられる。したがって,動的全視野計測においては,輝度値分布を広くし,輝度値255を示す領域が発生しないような撮影環境を確保することが必要であることがわかった。 次に,部材の動的性能に及ぼす材料劣化の影響評価として,鉄筋腐食を生じたRCはりの疲労特性について検討を行った。その結果,鉄筋の質量減少率が15%以上となると,曲げ疲労強度が大幅に低下する可能性が示された。また,質量減少率が曲げ疲労強度に及ぼす影響は,孔食の有無によって大きく異なることが示された。 動的荷重を受けるコンクリート構造物の数値解析手法の構築に向けた検討として,繰返し衝突を受けるRC版の損傷度評価を行うために,Lemaitreの損傷理論を導入した衝撃解析手法を構築し,その適用性について検討した。本手法を用いて,2辺支持RC版の繰返し衝突実験をシミュレーションした結果,衝突回数とともに累積していく部材の残留変位を適切に評価可能であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において示した,「動的全視野計測の計測条件の最適化」,「局所的に腐食を生じたRC部材の疲労特性」,「局所破壊を再現可能な解析手法の基盤作成」という目標に対して,いずれも十分な研究成果を得た。また,これらの成果について数編の論文および学会発表を行っており,今後も対外発表を積極的に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,研究代表者および研究分担者が近密な連携を図り,研究を行う。動的全視野計測に関しては,最適化条件を基に各種実験について計測を行い,既存の計測手法と比較してデータの整合性の確認を行う。腐食を生じたRC部材の疲労特性については,腐食と疲労を同時に生じさせる実験を開始する。局所破壊を再現可能な解析手法については,コンクリートの局所圧壊等を考慮した解析手法の構築を目指す。
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