Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 晃 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40305008)
麻植 久史 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (70462843)
鶴田 忠彦 (独)日本原子力研究開発機構, 地層処分研究開発部門, チームリーダー (10421679)
松岡 稔幸 (独)日本原子力研究開発機構, 地層処分研究開発部門, チームリーダー (40421672)
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Research Abstract |
本年度は実験的・数値解析的手法により,岩石の透水性と亀裂構造との関連性をマルチスケールで明らかにすることを目的とした。岐阜県東濃地域を研究対象に選び,ボーリングコアをサンプルとして浸透率測定,および画像解析による微小亀裂抽出と亀裂特性の定量化を行い,これらの関連性を見出した。さらに,地球統計学的手法によってkmオーダの広域亀裂分布をシミュレートし,その特徴を小スケールでの結果と比較することで透水性のマルチスケール構造について考察するとともに,地下水流動解析に応用した。 まず,水平・鉛直方向のコアサンプルからは,断層帯と割れ目帯で浸透率が高く,健岩部に比べて浸透率が10~10,000倍であることがわかった。透水性と鉱物組成・元素濃度との関係も明らかにできた。また,浸透率は亀裂面から離れるにつれて減少するが,いずれの断面でもNEとNW方向の値が高くなるという異方性の存在が顕著であった。この浸透率特性を詳細に検討するために,薄片のデジタル画像から微小亀裂の数,長さ,方位,連結度を求めたところ,いずれの断面でもほぼ直交するNFとNW方向への配向性が確認でき,浸透率が高い方向と調和した。したがって,微小亀裂が互いに連結し,より連続性の高いネットワークを形成することで,透水性の異方性が生じると考えられる。 次に,ボーリング調査による計50,900本の亀裂データから3次元亀裂分布モデルを構築したところ,シミュレーション亀裂の走向はWNWとENE方向に卓越しており,測定による浸透率の異方性や微小亀裂の配向性と整合的であった。対象地域周辺の広域応力場が,マルチスケール亀裂系の卓越方向の類似性と透水異方性の形成要因として考えられる。さらに,シミュレーション亀裂の面積と近傍の透水係数実測値には正の相関が現れ,これを利用して岩体全体の透水係数モデルを作成し,数値シミュレーションによって3次元の地下水流動形態の特徴を詳細に明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために,(1)断層や亀裂を含む岩体の透水係数を密な間隔で測定し,透水係数の空間的な不均質構造を詳細に明らかにする,(2)透水係数の測点で構成鉱物を同定する,(3)風化や変質に関連した主要元素の濃度を各測点で明らかにする,(4)岩石試料スケールでの構造や岩石初生の元素組成を求め,フィールドスケールでの元素濃度分布に関しての物理的・化学的なモデルを構築する,という研究項目を設定した。初年度にこれら4項目すべてに着手し,基礎データが得られるとともに,亀裂分布と透水性との関係に関する新しい知見が得られたので,研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様の実施体制と協力関係の下で研究を推進させる。岩石透水性の空間的変化に関しては成果が得られつつあるが,時間的変化の解明は着手したばかりなので,今後はこの研究項目に力を入れる。そのために継続して土岐花崗岩を対象とし,ボーリングコアや岩石試料を用いて透水係数測定,岩石の微細構造と元素濃度分布の解析を行い,透水係数分布の高精度空間モデリング法を開発する。また,化学平衡・物質溶脱に関する理論的検討を行う。これらの統合により,岩石の風化継続時間の推定法を開発するとともに,透水係数の時間-空間変化のメカニズム解明に関する基礎を確立させる。
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