2011 Fiscal Year Annual Research Report
土壌微生物-植物を介した形態別ヒ素輸送システムの解明
Project/Area Number |
23380044
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
石川 覚 独立行政法人農業環境技術研究所, 土壌環境研究領域, 主任研究員 (40354005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 和広 独立行政法人農業環境技術研究所, 有機化学物質研究領域, 主任研究員 (70354074)
藤巻 秀 (独)日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (20354962)
鈴井 伸郎 (独)日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (20391287)
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Keywords | 無機ヒ素 / メチルヒ素化合物 / 土壌細菌 / イネ |
Research Abstract |
農産物からの総ヒ素摂取量において、我が国ではコメの寄与が最も高い。一方、人体への影響を検討する上では総ヒ素のみならず、化学形態別のヒ素摂取量が重要となる。コメに含まれるヒ素の中で亜ヒ酸とジメチルアルシン酸(DMA)は主要な化学形態であるが、これらの存在比率は玄米の総ヒ素濃度によって大きく変化する。特に玄米に存在するDMAの由来は、土壌微生物によるヒ素代謝物が直接吸収されたものなのか、それともイネ体内での代謝物なのか、未だ不明である。本年度の研究では、高濃度のヒ素を含む土壌で湛水栽培したイネの根圏土壌および根から亜ヒ酸をメチル化する微生物の単離を行った。その結果、根から分離した細菌の中にDMAを生産する菌株を発見した。16SリボゾームRNAのシークエンス解析から放線菌の一種であることが判明した。さらに、未知の有機ヒ素化合物を生産する菌株も発見した。無機ヒ素を添加した培養液から本化合物を精製し、高分解能LC/MSで分子式を同定したところ、分子量を含め既知の有機ヒ素化合物の中に相当する報告例はなかったため、新規の有機ヒ素化合物であることが示唆された。また高分解能LC/MS/MSの解析結果からモノメチルヒ素の部分構造を有していることが明らかとなった。本化合物は既知の経路とは異なるヒ素のメチル化が行われている可能性があり、イネ根圏におけるヒ素の化学形態の変化には新たな代謝経路が存在すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無機ヒ素からジメチルアルシン酸(DMA)や未知のヒ素化合物を合成する菌株をイネ根面から単離することに成功した。単離した菌は新種である可能性が高く、またイネ根面からヒ素のメチル化に関わる細菌を単離した例は我々の知る限り世界初である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はヒ素のメチル合成酵素に関わる遺伝子を新種から単離するとともに、その機能解析を実施する。また、根圏や根面での分布密度を異なる土壌間で調査するとともに、玄米の形態別ヒ素濃度との関係を明らかにする。一方、アイソトープを利用して、イネ体内でのヒ素輸送動態を解析する予定であったが、震災の影響で原子炉が未だ使えない。今後の動向を踏まえ、研究計画の一部変更を視野に入れながら、研究を推進する。
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