2012 Fiscal Year Annual Research Report
土壌微生物-植物を介した形態別ヒ素輸送システムの解明
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23380044
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
石川 覚 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (40354005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 和広 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (70354074)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 無機ヒ素 / メチルヒ素 / 土壌細菌 / 水稲 |
Research Abstract |
農産物からの総ヒ素摂取量において、我が国ではコメの寄与が最も高い。一方、人体への影響を検討する上では総ヒ素のみならず、化学形態別のヒ素摂取量が重要となる。コメに含まれるヒ素の中で亜ヒ酸とジメチルアルシン酸(DMA)は主要な化学形態であるが、これらの存在比率は玄米の総ヒ素濃度によって大きく変化する。特に玄米に存在するDMAの由来は、土壌微生物によるヒ素代謝物が直接吸収されたものなのか、それともイネ体内での代謝物なのか、未だ不明である。 昨年度の結果、高濃度のヒ素を含む土壌で湛水栽培したイネの根面から亜ヒ酸をDMAに変換する新種の放線菌(Streptomyces sp. GSRB#54株)を単離した。さらに亜ヒ酸を未知のヒ素化合物に変換する新種の細菌(Burkholderia sp. GSRB#05株)も単離した。未知のヒ素化合物はモノメチルヒ素の部分構造を有していることを高分解能LC/MS/MSによって明らかにした。 本年度、新種の放線菌からDMA合成に関わる遺伝子の単離を行ったところ、これまで報告されているヒ素のメチルトランスフェラーゼ遺伝子(ArsM)とは相同性が低く、新規のArsM遺伝子を単離することに成功した。また、GSRB#05株が生産する新規のヒ素化合物をNMRによって解析したところ、モノメチルヒ素に炭素数4のαアミノ酸が結合した構造であり、新規のメチルヒ素化合物であることがわかった。無菌培養系で新規ヒ素化合物のイネによる吸収試験を試みたが、根部・地上部共に蓄積しないため、根から吸収されない化合物と思われた。このヒ素化合物はArthrobacter属細菌によって、モノメチルアルソン酸まで分解されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規のArsM遺伝子を単離したことに加え、新規のメチルヒ素化合物の構造も明らかにした。これにより、当初の研究目的は達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)GSRB54株が持つ新規DMA合成酵素遺伝子(ArsM)の機能解析-ヒ素感受性大腸菌に新規のArsM遺伝子を導入し、亜ヒ酸を培地に添加して、大腸菌の耐性試験を行う。さらに、培地中ヒ素の形態変化も調査する。GSRB54株による亜ヒ酸からDMAへの変化が二次代謝によるものなのかどうか調査する。 2)GSRB05株が合成する未知ヒ素化合物の絶対構造の決定とその合成に関わる遺伝子の同定-未知の有機ヒ素化合物はモノメチルヒ素に炭素数4のαアミノ酸が結合した構造であることがわかったので、その絶対構造を決定する。昨年に引き続き、GSRB05株のゲノムライブラリーから、大腸菌のヒ素感受性株を用いて新規化合物の合成に関わる遺伝子を特定する。 3)各種土壌におけるDMA合成細菌の存在と玄米中DMA濃度との関係-ヒ素濃度やタイプの異なる土壌にイネを栽培し、根面に生息するDMA合成細菌の分布密度とその活性を調査する。また、玄米中のDMA濃度を測定し、DMA合成細菌と玄米DMA濃度との関係を明らかにする。
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[Presentation] イネ根圏土壌から分離した微生物のヒ素代謝2012
Author(s)
倉俣正人, 片岡良太, 山崎健一, 榊原風太, 馬場浩司, 石坂眞澄, 安部匡, 髙木和広, 加茂綱嗣, 平舘俊太郎, 石川覚
Organizer
ヒ素シンポジウム
Place of Presentation
宮崎大学
Year and Date
20121124-20121125
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