2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23380052
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
吉川 博文 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50175676)
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Keywords | 微生物 / 細胞分裂 / 細胞分化 / 生長戦略 / 遺伝子発現 / 機能ネットワーク / 脂質合成 |
Research Abstract |
枯草菌において対数増殖停止期に生存戦略を判断する重要な因子として、OdhBとPlsXが関与するそれぞれのネットワークを同定している。OdhBは元々、必須遺伝子として報告されていたが、当初の研究からOdhB欠損株は栄養増殖期のみを持つことが分かった。OdhBは元々OdhA,PdhDとヘテロ三量体を形成し、大きな複合体となってクエン酸回路の1酵素として働いているが、昨年度の結果より、3者とも胞子形成に関与している、すなわち酵素複合体としての機能が重要であることが示された。また、TCA回路を形成する各酵素の破壊株を構築してアッセイしたところ、胞子形成への影響はさまざまであり、エネルギー生産が胞子形成開始に必要なことは証明されたがodhBほどの完全欠損をもたらす遺伝子は他になかった。 一方、PlsXが細胞分裂機構に関与するメカニズムについては、いくつかの相互作用因子の解析を通じて調べた。温度感受性変異の抑圧因子として枯草菌で唯一必須の二成分制御系WalR/WalKとの関連が示唆された。必須の遺伝子にマップされたことはPlsXの必須性を説明できる可能性もあったが、昨年度の解析では、膜の流動性を介した関与であると考えられ、必須性には直接繋がらなかった。一方、他の抑圧因子としてアラーモンppGppの合成に関与する遺伝子にマップされ、緊縮調節に関与することも示された。このように、細胞の生理的状況の遷移期におけるさまざまな機能との関連が見られ、PlsXが非常にグローバルな機能を持っていることが確認出来た。脂質合成系の初期遺伝子でありながら、さまざまな細胞機能とネットワークを形成している状況が把握出来た。今年度は引き続き、分子的なメカニズムを追跡するが、その具体的機能の基盤現象を明らかに出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初注目した2つの因子のアノテーションされた遺伝子機能と、影響を及ぼしている胞子形成や細胞形態への関与が不明であったが、これまでの解析から、その細胞機能への関与が具体的に明らかになりつつある。この点は順調に目的に近づいていると考える。一方で、具体的な分子メカニズムという意味では、不明な点が多く残っており、今後の解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、2つのネットワークについて引き続き解析を進めるが、基本的な手法は遺伝学的変異解析やその抑圧因子の同定、また相互作用因子の生化学的解析が中心である。これらを迅速に進めるための環境は整っており、次世代シーケンサーや質量分析機は自由に使用出来るため問題ない。また、蛍光顕微鏡等による視覚的観察は益々重要になるが、現有設備で標準的解析は可能である。更に詳細な観測のため、共焦点顕微鏡の導入を含め、強化していく予定である。
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Research Products
(18 results)