2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23380052
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
吉川 博文 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50175676)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微生物 / 細胞分裂 / 細胞分化 / 生長戦略 / 遺伝子発現 / 機能ネットワーク / 脂質合成 |
Research Abstract |
OdhBは元々OdhA, PdhDとヘテロ三量体を形成し、3者とも胞子形成に関与している、すなわち酵素複合体としての機能が重要であることを示してきた。昨年度は、TCA回路の回転具合がエネルギー供給量の違いを反映し、そのことが直接、胞子形成に影響している可能性を検証するため、分岐鎖アミノ酸の添加によるスクシニルCoA以降の回転、および、コハク酸やリンゴ酸といった中間代謝物の添加による影響について解析したが、回復は見られなかった。一方、大腸菌のオルソログ導入試験では、pdhD オルソログで溶菌の回復が見られた。したがって、エネルギー生産が回復すれば少なくとも溶菌は抑えられる可能性を示唆した。一方、メタボローム解析、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析も行ったが、破壊株では細胞外高浸透圧調節物質であるベタインの量が著しく減少し、更に高浸透圧ストレス保護性遺伝子の転写量も減少していた。その他の結果と併せ、変異株の溶菌は浸透圧溶菌であることがわかった。 一方、PlsXが細胞分裂機構に関与するメカニズムについては、さまざまな相互作用因子を同定しており、必須の二成分制御系WalR/WalK、緊縮応答の調節因子、リボソームサブユニット等の解析から、幅広い生命現象に関与していることが明らかになった。リボソームサブユニットの解析では、べん毛運動に関与するSigDの発現に関与することを見出し、リボゾームの新しい機能を見出した。また、緊縮調節では、メチオニン代謝関連因子がアラーモンppGpp合成・分解酵素に作用していることを明らかにした。したがってPlsXは細胞分裂に留まらず、さまざまな基本的生命現象に関与していることを見出した。このようなグローバルなネットワークの存在を確認し、単に脂質合成という機能を越えた、細胞の生存戦略解明の大きなカギになることを示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初注目した2つの因子のアノテーションされた遺伝子機能と、影響を及ぼしている胞子形成や細胞形態への関与が不明であった。これまでの解析から、溶菌に関わるプロセスが判明してきた点、また、緊縮調節やリボソームの新機能についての新知見が明らかになり、グローバルなネットワークが実証されてきた。この点は順調に目的に近づいていると考える。特に大腸菌TCA回路因子との置換実験においては、一部相補が見られたことから、枯草菌TCA回路の新規機能に関して大きな示唆を得る道筋が開けた。胞子形成という枯草菌独特の系に大腸菌TCA回路機能がどのような効果をもたらすか検証することで、種特異的な機能を解析することが出来ると思われる。 一方で、具体的な分子メカニズムという意味では、未だ不明な点が多く残っており、今後の解析が必要である。脂質合成系因子に関しては、その広範な機能が明らかになるにつれ、細胞機能を横断的に見る必要性が出て来ており、更なる工夫が要求される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、2つのネットワークについて引き続き解析を進めるが、基本的な手法は遺伝学的変異解析やその抑圧因子の同定、また相互作用因子の生化学的解析が中心である。これらを迅速に進めるための環境は整っており、次世代シーケンサーや質量分析機は自由に使用出来るため問題ない。最終年度のため、当初目的を達成するため、最も重要と考えられる2つの機能、胞子形成への影響および、グローバルネットワーク調節因子としての中心的機能を中心に解析する。これまでの解析から、相互作用因子や個々の機能についての情報は得られているので、引き続き分子機能を解析しつつ、細胞機能横断的な解析および結果解釈が必要になってくる。新規因子の局在化や新たな顕微鏡観察技術等を駆使してこれを行うと共に、共焦点顕微鏡が当学科に導入されたことにより、大きな進展が期待できる。
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Research Products
(24 results)