2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23380083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平井 伸博 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00165151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 明義 信州大学, 農学部, 准教授 (10324237)
田中 千尋 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60263133)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 森林生態 / 菌根 / マツタケ / アカマツ / 抗菌物質 |
Research Abstract |
坂井研究林のマツタケシロの抽出物から抗菌物質の単離精製を行った。これまでの結果によると、抗菌物質は極めて水溶性が高く、紫外吸収をもたない物質である。このため屈折率計を用いてHPLC分析を行ったが、共存する単糖類のピークは認められるものの、活性物質に相当するピークを検出することはできなかった。活性物質はODSカラムでは水100%で溶出してもほとんどカラムに保持されない。陰イオン交換樹脂のDEAEに保持されることがわかっていたが、これまでDEAE樹脂から活性成分を溶出させることができていなかったので、その溶出方法をあらためて検討した。その結果、活性物質を0.03-0.3 Mの塩酸で溶出させることに成功した。 他の坂井研究林の試料や採取年の異なる試料、長野県で採取された宿主の異なる試料も同様にDEAEカラムで分画したところ、いずれも同様に塩酸水溶液にて活性物質が溶出することがわかった。このことから、抗菌物質はシロの生育場所や宿主によらず、同じ物質である可能性が強く示唆された。 DEAEカラム由来の活性試料のNMRスペクトルには顕著なプロトンシグナルが認められなかった。ただし弱い13Cシグナルが2本検出された。有機化合物ではない可能性が考えられたので、フッ化物イオン電極によりフッ素イオンを、モリブデンブルー発色法によりリン酸を、イオン交換カラムによるHPLC分析で塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどを、誘導結合プラズマ発光分光分析によりナトリウム、ホウ素、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの検出を試みたが、どれも有意に含まれているとは言えなかった。 13CNMRスペクトルよりシュウ酸が活性物質と予想したが、シュウ酸にはほとんど抗菌活性がなく、シュウ酸に類似した物質と推定するにとどまっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗菌物質の性質が通常の低分子有機化合物とは異なり、水溶性で紫外吸収を持たないことから精製が極めて難しく、その単離に時間がかかっているため。しかし、効果の高い精製法を見出すことができたので、ようやく単離の見通しが立った。最終年度は、抗菌物質が単離でき次第、構造決定、検出方法の確立、分布調査などを実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)単離構造決定(担当 平井) これまでの研究により、抗菌物質は水溶性の紫外吸収をもたない酸性物質であることが明らかにされている。この性質を利用して陰イオン交換樹脂による精製が極めて効果的であることがわかったが、依然としてシュウ酸と思われる共存物を含んでいる。そこで、水溶性酸性物質の分析に効果的とされるHILICカラムなどを用いたHPLC分析と分取により、抗菌物質を単離する。単離した抗菌物質の化学構造の決定を行う。 2)抗菌物質の検出定量法の確立(担当 平井) 抗菌物質の検出定量法を、HPLCなどを利用して確立する。HPLCによる検出定量を容易にするため紫外吸収誘導体化も試みる。 3) 抗菌物質の誘導性の検証(担当 山田・平井) 抗菌物質が菌根形成に伴って誘導されるのか否かを調べるために、菌根を形成したアカマツと形成していないアカマツ苗を栽培し、根抽出物の抗菌活性と抗菌物質量を比較分析する。アカマツと菌根菌のどちらがその生産者かも明らかにする。 4)抗菌物質濃度の周年変化と地域差の分析(担当 山田・田中・平井) マツタケシロを季節ごとに採取し、それらの抗菌物質含量の変化を定量分析し、シロの拡大速度との相関を考察する。長野県のマツタケシロを入手し、その抗菌物質も分析する。それにより、地域が異なっても抗菌物質が同一かあるいは違うのかを検証する。 5) 3年間の研究成果をまとめる。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] A sheathing mycorrhiza between the tropical bolete Phlebopus spongiosus and Citrus maxima2012
Author(s)
Phan, NDH., Yamada, A., Shimizu, K., Noda, K., Dang, LAT., Suzuki, A
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Journal Title
Mycoscience
Volume: 52
Pages: 347-353
DOI
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