2013 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の効率的人工授精に向けた「卵-精子相互作用」の分子機構解明
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23380110
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松原 孝博 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (60443389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 耕平 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (10585764)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 受精 / 卵門 / 精子活性化 / 精子誘導 / 卵巣腔液 |
Research Abstract |
硬骨魚類の卵では、卵膜を貫通する卵門とよばれる孔が一か所存在し、精子はそこを通らなければ受精できない。この研究では卵門への精子誘導と卵巣腔液の精子活性化機能に焦点を当て、精子に対する一連の働きかけ、「卵‐精子相互作用」が硬骨魚類に共通して存在することを明らかにするとともに、それらをもとに養殖や栽培漁業の効率化に貢献する。平成25年度はカタクチイワシ産卵期の卵巣から調整したcDNAより、精子誘導因子(SMIF)遺伝子候補の全長配列を得た他、クロマグロの配列解析をほぼ終了した。ホモロジーの解析から同遺伝子は生体防御に機能するα2-マクログロブリンファミリーに属する可能性が示されたことから、同遺伝子の機能の確定を進めることに重点を置き、作業を順序立てて実施した。ニシンでは現在までに、1)卵膜から目的タンパクを大量に精製する方法を開発、2)N-末端及び内分アミノ酸配列を解析し、その情報をもとに上記SMIFcDNAを解析、3) SMIF遺伝子よりリコンビナントタンパク質を作製し、特異抗血清を作製、4)SMIF免疫組織化学の方法を確立。免疫組織の結果は、卵門周辺を特異的に染色し、1つの間接的証拠を得たと言える。さらに、平成25年度、同配列情報をもとにリアルタイムPCR系を作製し、卵巣の発達が開始される10月以降、各月の卵母細胞を用いて、同遺伝子の発現量を測定した結果、SMIF遺伝子発現は卵母細胞の発達と共に増加し、2つ目の間接的証拠を得た。同遺伝子の研究は新規なものであり、その確定作業を慎重に行う。 精子活性化因子に関しては、平成24,25年複数種を用いて高速CCDカメラの画像解析により、卵巣腔液に運動精子の比率を高めることに加えて精子運動速度を速める効果を持つ因子が含まれ、クロマトグラフィーによる分画化と精子活性を組み合わせた試験により、タンパク質等高分子量の分画に活性が存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類の精子誘導因子、精子活性化因子に関する研究は極めて少なく、新たな領域と言える。平成25年度の研究において、ニシン以外にカタクチイワシ精子誘導因子(SMIF)遺伝子候補の完全長配列を得ることに成功した。それらは、SMIFによる精子誘導がニシンに限定的な現象ではなく、硬骨魚類の受精の際広く利用されている現象であることを間接的に支持する大きな進展と言える。また、平成25年度、ニシン生殖腺の発達に伴うSMIF遺伝子の発現を解析するために、平成24年度に作製し、予備試験を実施したリアルタイムPCRを用いて各月採集した卵母細胞を用いて発現時期の特定を行い、同遺伝子がSMIF遺伝子であることの間接的な証拠を追加した成果は大きい。ニシン全長配列で作製したリコンビナントタンパクは残念ながら精子に対して生理活性を持たないため、間接的な証拠の集積が必要となる。これらの成果をふまえ、年度目標は概ね達成したと評価した。これまで研究蓄積の少ない新領域であり、論文作成に必要なデータは得られつつあり、確実性を確認次第、次年度以降に公表件数を増やす。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、卵門への精子誘導と卵巣腔液による精子活性化が、硬骨魚類に広く共通することを明らかにすることにあることから、精子誘導因子では分類群の異なるできるだけ多くの魚種で遺伝子解析を行う。また、精子活性化因子については、卵巣腔液の効果が顕著な魚種からタンパクを精製し、遺伝子情報を得ることが最重要課題と位置づけられ、カタクチイワシのモデル魚種化に向けた飼育技術開発、実験に必要な種々の生理、分子生物情報の集積が平成25年度に可能となった。平成26年度はカタクチイワシを中心として活性化因子の特定を目指す。
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Research Products
(1 results)