2012 Fiscal Year Annual Research Report
アワビの成長および再生に関与する生理活性ペプチドの同定と調節機構の解明
Project/Area Number |
23380114
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
森山 俊介 北里大学, 水産学部, 教授 (50222352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50360508)
天野 春菜 北里大学, 水産学部, 講師 (50431341)
奥村 誠一 北里大学, 水産学部, 准教授 (60224169)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エゾアワビ / 脳神経節cDNAライブラリー / 食欲調節ペプチド / 成長促進ペプチド / 性成熟促進ペプチド / 再生促進ペプチド |
Research Abstract |
水産資源として重要なエゾアワビの生産性の向上に資する成長促進技術を開発する上で、アワビの成長や細胞増殖を促す生理活性ペプチドを同定し、機能および調節機構を解明する基礎研究は極めて重要な役割を果たす。本年度は、昨年度の研究に引き続き、アワビ脳神経節から成長、食欲や代謝調節、また、再生促進に関与する生理活性ペプチドを探索して構造を解析するとともに、生理活性ペプチドの産生部位や機能を解析した。 上足組織を切除したアワビ脳神経節cDNAライブラリーを作成し、1056クローンの塩基配列を解析し、データベースを活用して相同性検索を行った。その結果、再生や成長、糖代謝、食欲、摂食行動および性成熟に関与するペプチド・ホモログ群が得られた。一方、普通サイズの対照個体の脳神経節cDNAライブラリーからは、おもに食欲、摂食行動および血圧調節に関与するペプチド・ホモログ群が得られた。 同定した食欲調節ペプチド(NPY)に対する抗体を作成し、この抗体に対する免疫陽性細胞体は脳神経節の細胞層に検出され、免疫陽性繊維が脳神経節の内部に投射していることを明らかにした。また、合成NPYをアワビ稚貝に筋肉注射した結果、2.5μg/gを注射した稚貝の体重は対照群よりも有為に増加した。さらに脳神経節におけるNPYmRNAの発現レベルは、成長の良い稚貝ほど高い値を示すことから、NPYがアワビの成長促進において重要な機能を担うと考えられる。 アワビの上足組織を切除後、3~14日間での再生を組織学的に確認した。また、再生を司る細胞増殖因子を同定する研究の一環として、哺乳動物の細胞増殖因子抗体を用いて免疫組織染色を行った結果、マウスEGF抗体では再生中の上足組織において免疫陽性反応は検出されなかったが、ウサギPDGF抗体に対する免疫陽性反応が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、アワビの成長および再生に関与する生理活性ペプチドを網羅的に探索することを目的として、上足組織を切除した個体から作成した脳神経節cDNAライブラリーから、昨年度に同定した食欲調節に関与するペプチド・ホモログに加えて、成長、再生や代謝調節に関与するペプチド・ホモログ群を同定するに至った。また、食欲調節に関与するペプチド・ホモログの一次構造、産生部位および成長促進に及ぼす効果を明らかにするなど、アワビの成長の調節機構の解明に向けた研究が進展した。得られた研究成果に基づいて、同定した成長、再生および代謝調節に関与するペプチド・ホモログ群の機能および働く仕組みを解明することにより、アワビの成長の調節機構をより良く理解することができるまでに研究は進展している。 さらに本年度、上足組織を切除した組織の再生過程における細胞の形態変化に関する基礎的知見を集積し、哺乳類の細胞増殖因子・ホモログが重要な機能を担うことを示唆する結果が得られた。本研究の成果に基づいて、組織の再生に関与する脳神経節由来のペプチドおよび再生組織における細胞増殖因子の機能および働く仕組みを解明することにより、アワビの再生の調節機構を明らかにすることができると考えられる。 一方、本年度の研究において、脊椎動物のみならず軟体動物の性成熟に関与する神経ペプチド・ホモログを同定することができた。このことは、アワビにおける性成熟のメカニズムを解明することをも可能にする極めて重要な研究の成果である。 以上の通り、本年度の研究は、おおむね計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、成長優良個体、上足組織を切断した個体および通常成長個体の脳神経節cDNAライブラリーを作成し、成長、食欲や代謝調節、また、再生あるいは性成熟に関与する生理活性ペプチド・ホモログ群を同定した。さらに、アワビの成長の調節機構を解明るする研究の一環として、食欲調節に関与するペプチドの一次構造、生理活性および産生部位を明らかにした。 本年度は、これまでに得られた研究成果に基づいて、①成長、食欲や代謝調節、また、再生あるいは性成熟に関与する生理活性ペプチドの全一次構造をcDNAクローニングおよびアミノ酸配列分析により決定する。②これらの生理活性ペプチドを合成して、アワビの成長、再生および生殖腺の発達・成熟に及ぼす効果を検討する。③これらの生理活性ペプチドに対する抗体を作成し、生理活性ペプチドの組織分布を明らかにする。④アワビ稚貝の成長速度の違い、栄養状態あるいは環境の変化にともなうこれらの生理活性ペプチドのmRNAの発現動態を検討する。⑤これらの生理活性ペプチドのエライザー系を確立し、体腔液中の動態を検討する。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Chum salmon fry grow faster in seawater, exhibit greater activity of the GH/IGF axis, higher Na+, K+-ATPase activity, and greater gill chloride cell development.2012
Author(s)
Iwata M, Kinoshita K, Moriyama S, Kurosawa T, Iguma K, Chiba H, Ojima D, Yoshinaga T, Arai T.
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Journal Title
Aquaculture
Volume: 362-363
Pages: 101-108
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Species sensitivity distribution approach to primary risk analysis of the metal pyrithione photodegradation product, 2,2’-dipyridyldisulfide in the Inland Sea and induction of notochord undulation in fish embryos.2012
Author(s)
Mochida K, Amano H, Ito K, Ito M, Onduka T, Ichihashi H, Kakuno A, Harino H, Fujii K.
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Journal Title
Aquat Toxicol
Volume: 118
Pages: 152-163
DOI
Peer Reviewed
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[Book] Prolactin2013
Author(s)
Takahashi H, Kudose H, Takagi C, Moriyama S, Sakamoto T.
Total Pages
21-34
Publisher
InTech
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