2011 Fiscal Year Annual Research Report
筋収縮をトリガーとしたDNA脱メチル化による筋特異的遺伝子発現制御
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23380159
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池内 義秀 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (90168112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野谷 航 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (20404056)
佐藤 祐介 九州大学, 大学院・農学研究院, 特任助教 (50589520)
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Keywords | 骨格筋 / DNA脱メチル化 / 筋収縮 / ミトコンドリア / オートファジー |
Research Abstract |
申請者らはこれまでの研究から、脱アミノ化酵素APOBEC2が筋サルコメア内のZ線上に局在することを明らかにしている。初年度(平成23年度)の計画では、筋サルコメアZ線上に局在するAPOBEC2がその構造維持に関与するかどうかを検討することであった。申請者らは、APOBEC2欠損が筋サルコメアにおぼす影響を、各種抗体(α-アクチニン、ミオシン重鎖速筋型および遅筋型、コネクチン/タイチン、リアノジンレセプター)による蛍光免疫染色法により調べた。野生型およびAPOBEC2欠損型の両マウスの後肢筋(ヒラメ筋、長趾伸筋)に対する免疫染色の結果、筋サルコメア構造に差は認められなかった。さらに透過型電子顕微鏡により筋サルコメアの超微細構造を観察したが、野生型およびAPOBEC2欠損型の両マウスで差は見られなかった。以上の結果から、筋サルコメアZ線上に局在するAPOBEC2それ自体はその構造の維持には関与していないと考えられる。一方、透過型電子顕微鏡観察から、APOBEC2欠損筋では多数のオートファゴソームと巨大化した異常なミトコンドリアが観察された。また、APOBEC2欠損筋では速筋型である長趾伸筋でも、野生型に比べ多数のミトコンドリアの存在が認められた。さらに、オートファゴソームの二重膜の多くがミトコンドリアを包み込んでいる様子が観察された。APOBEC2欠損筋ではミトコンドリアのオートファジーであるマイトファジーが起こっている可能性が示唆されたことから、APOBEC2がミトコンドリア傷害の蓄積に起因する筋疾患と関係があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の「研究の目的」は、APOBEC2が筋サルコメアのZ線の構造維持に関与するかを明らかにすることであった。交付申請書に記載した通り、蛍光免疫染色法と透過型電子顕微鏡による解析を行ったところ、APOBEC2を欠損しても筋サルコメアの構造が変化しないことを明らかになった。一方で、透過型電子顕微鏡による解析結果から、APOBEC2欠損が筋ミトコンドリアのオートファジーを惹起する可能性があることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、APOBEC2が筋サルコメア構造の維持には関与しないことを明らかにした。次年度(平成24年度)は、APOBEC2が筋特異的遺伝子のDNA脱メチル化に関与するかどうかを検討する予定である。昨年、筋芽細胞株C2C12を用いた研究から、APOBEC2のノックダウンが筋分化マーカーの発現を抑制することが報告された(Vonica et al, Dev.Biol,2011)。この報告は、APOBEC2が筋分化の制御に関わることを示していることから、申請者はAPOBEC2が筋分化遺伝子のDNA脱メチル化に関与していると予想している。そこで、まずAPOBEC2欠損マウス由来の初代培養筋芽細胞を用いて、APOBEC2欠損により筋分化が抑制されるかどうか検討する。筋分化の抑制が確認できればAPOBEC2による筋分化特異的遺伝子の特定とDNA脱メチル化を定量的に調べる。
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Research Products
(14 results)