2011 Fiscal Year Annual Research Report
メタゲノム遺伝子の網羅的発現を目指した大腸菌宿主の開発
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23380197
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮崎 健太郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60344123)
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Keywords | 翻訳 / リボソーム / 翻訳開始因子 / 発現バイアス / 宿主 / 進化工学 / 開始コドン / 大腸菌 |
Research Abstract |
本研究では、多様な遺伝子を均等に発現する大腸菌宿主の創成を目的とする。 とくに平成23年度は、多様な遺伝子のモデルとして、AUG、GUG、UUGの三種異なる開始コドンをもつ緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を合成し、発現効率検証用のレポーター遺伝子として用いた。宿主改変の手段の一つとして翻訳開始因子(Translational Initiation Factor)に着目し、その構成成分の一つであるIF3を対象に機能改変を試みた。 まず、IF3の機能を精密に検証するために、ゲノム上に存在するIF3遺伝子を完全欠失させることを試みた。IF3は必須遺伝子であるため、欠失させるだけでは致死的である。そこで、IF3を含む様々な遺伝子断片を組み込んだレスキュープラスミドを構築し、本プラスミドで生育を相補しながらゲノム上のIF3の欠失を行った。その結果、IF3だけではなく、その前後領域を含む遺伝子断片を用いたレスキュープラスミドを用いた場合にゲノム上のIF3遺伝子を完全欠失させることができた。以後の実験では、本欠損株と上述の開始コドン置換型GFP遺伝子を用いて様々なIF3の機能を検証した。 野生型大腸菌ではAUG>GUG>UUGの順序の強い発現バイアスが観察された。完全欠失株に対し大腸菌IF3をプラスミドで相補した株でも同様のバイアスが確認された。次いで異種生物由来のIF3を組み込んだ変異宿主を創成したところ、生育を相補させることができた。これらの変異株の生育は、大腸菌由来のIF3で相補した場合と比較して37℃では大差なかったが、外来IF3の一部は25℃での生育が著しく劣る低温感受性を示した。また、AUG/GUG-GFP遺伝子の発現レベルを向上させるIF3も同定された。このように、IF3の置換変異が生育状態や翻訳特性に大きな影響を及ぼすことが推察された。 次に、変異PCR法により大腸菌IF3遺伝子のランダム変異ライブラリーを構築した。これらの変異IF3ライブラリーで大腸菌IF3欠損株を形質転換し、増殖に対する影響、開始コドンの違いによるGFPの発現レベルの程度を比較した。その結果、増殖は影響を与えずに、GFP(AUG)やGFP(GUG)の発現を1.5-2倍程度向上させる変異体が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌宿主開発の研究において、翻訳効率の検証に用いるレポーター遺伝子を整備した。開始コドン変異体以外にも開始コドン近傍の二次構造の違いで翻訳活性の異なる変異体、コドン組成の異なる変異体など、緑色蛍光タンパク質等をベースに種々作成した。これらのレポーター遺伝子を模擬メタゲノムとして使用した。大腸菌変異宿主ライブラリーについては、翻訳開始因子についてランダム変異や異宿主由来のものを用いてたようなライブラリーを構築した。上記いずれについても、当初計画通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
宿主ライブラリーについては、翻訳開始因子IF3のランダム変異の結果を詳細に解析するとともに、進化工学的に世代を重ね、野生型IF3とは特性の大きく異なる変異体を創成する。得られた変異体がnon-AUG遺伝子に対し発現バイアスを緩和するか否かなどを検討する。また、ゲノム変異については、ミューテーター遺伝子の発現を抑制する仕組みを用いて、様々な変異率、変異スペクトルを有する変異大腸菌ライブラリーを構築する。各種レポーター遺伝子により変異株を形質転換し、特徴的な発現を示す変異株を同定する。
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