2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23390122
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阪口 薫雄 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (70192086)
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Keywords | 免疫学 / ゲノム / 遺伝子 |
Research Abstract |
抗体V領域への体細胞突然変異(somatic hypermutation : SHM)導入はactivation-induced cytidine deaminase(AID)によって引き起こされるが、シチジンの脱アミノ化がどのようにしてV領域、S領域特異的に起こるのかについては明らかになっていない。我々はこれまでにAIDのV領域SHM誘導に胚中心B細胞の抗体親和性亢進に働くGANPが直接V領域選択性に関与することを発表している。本研究計画ではGANP/AID複合体がIgV領域遺伝子特異的ターゲッテイングを行う際の分子メカニズムを明らかにし、高親和性B細胞産生の分子機構を解明することを目的とする。研究計画は二つの角度から解析をすすめ、1、GANPのRNA認識モチーフ(RRM)によるRNA認識と結合性を調べるため、ReV依存性HIV-1 mRNA輸送測定システムを用いてmRNA核外輸送機能について解析した。RRMの認識するRNAのうち非翻訳性のRNA群に焦点をあてて検討した。その結果、long non-coding RNAの中でも選択的に結合するRNAが存在することが明らかになった。2、GANPのIgV領域DNAへのターゲットに関しては特に成果が見られた。遺伝子再構成したIgV領域のC末部分に選択的にGANPが結合すること、その結合にはGANPの保有するヒストンアセチル化(HAT)活性が必要であることが明らかになった。HAT活性によってIgV領域のヌクレオソームにヒストンアセチル化を誘導し、そのことからAID/RNA polymerase II複合体をGANP分子が動員している可能性を示唆した。 これらの成果はGANPがIgV領域選択的なAIDのヌクレオソーム配置に関する分子基盤を構成することを明確にした。最新成果はKeystone Symposia 2012 Bostonで口頭発表し大いに注目された。論文投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GANPとAIDが細胞質で結合し細胞核内に運ばれるという概念は新規であるが、現在国際的に認知されるに至った。現在、この複合体に会合する分子の解析を競っているが、我々の同定している分子はほぼ国際的な成果と一致する。さらにGANPが抗体遺伝子の染色体の解放を行うことを見いだしていることから、新しい「解錠」効果を有することが示唆され、抗体産生における多様性獲得の新しいパラダイムを展開できるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
GANP/AIDの機能を促進したり、抑制したりするいわゆるON/OFF制御機構を解明することが重要だと考えている。事実、無制限にAIDの機能を亢進させるとDNA損傷が激しく、細胞死や腫瘍化を引き起こすことが明らかになっている。本研究はダイナミックに増殖と遺伝子変化を繰り返す体細胞をいかに安定にするかという課題を明らかにする上で重要である。すなわち生活習慣病、炎症性自己免疫疾患、がん、老化等の多くの課題と密接な関連を有する。現状では広範な異分野研究者との交流の場が少ないと痛感している。海外の研究者との交流の支援も必要になっている。
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Research Products
(30 results)