2011 Fiscal Year Annual Research Report
長寿社会における終末期医療のあり方 ー 東洋型意思決定法の実証と実践および発信
Project/Area Number |
23390127
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甲斐 一郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30126023)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (20241060)
清水 哲郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特任教授 (70117711)
樋口 範雄 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (30009857)
会田 薫子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特任研究員 (40507810)
|
Keywords | 終末期医療 / 臨床倫理 / 意思決定プロセス / 家族支援 / 人工的水分・栄養補給法 |
Research Abstract |
本研究は、長寿社会における終末期医療の意思決定に際する本人意思の尊重および家族支援に関して、日本の歴史文化・社会的特徴を踏まえたあり方を模索し、具体的な方途を提示することを目的として開始された。そのため、我々の先行研究の知見を基に、さらにデータを収集し、日本の現行の実定法のなかで矛盾なく実施可能な意思決定法を提示することを目的としている。 本研究の1年目である平成23年度は2つの量的調査を実施した。1件目は家族介護者を対象とする調査であり、ある県の行政の協力を得て1775名を対象として郵送無記名自記式質問紙調査を実施した。回収数は1326票(回収率:75%)。その結果、高齢者本人と看取りについてすでに話し合いを持ったり、本人の意向を確認しているものは2割弱で、今後本人と相談したり意向を確認する予定のものを合わせても半数に満たず、多くが高齢者本人の看取りについての希望を確認することができないでいる現状が明らかになった。自由記述からは、看取りの準備にそもそも何が必要なのかわからないといった報告があげられ、看取りについての心構えや、具体的な準備の方法についての情報提供の必要性が示唆された。 2件目は、療養病床の入院患者における経管栄養法の施行実態に関して、療養病床の勤務医968名を対象として実施した郵送無記名自記式質問紙調査である。回収数は暫定で262票(中間回収率:27%)。アルツハイマー末期で摂食困難な患者に対して、対象医師の半数近くは、「人工的水分・栄養補給法(AHN:artificial hydrationand nutrition)を差し控えて枯れるように死ぬことは自然なことである」と考え、9割以上は「医療スタッフと家族が十分話し合った結果であれば、末梢点滴だけを行い、あとは自然の経過にゆだねることは可能である」と考えていることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の調査を2件とも平成23年度中に実施した。今年度はその分析を進め、得られた知見を踏まえて、日本の社会的文化的背景に合った終末期医療の意思決定プロセスの構築と実証につなぐことを目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
国内の調査知見の分析を進め、知見を踏まえた意思決定プロセスを構築し、臨床現場の協力を得て検証する。並行して、医療介護従事者対象の臨床倫理セミナーや一般市民対象の講演会を開催し、研究成果を発信するとともに、それに対する意見を研究班員のホームページにて発信する。
|
Research Products
(13 results)