2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病の一塩基多型の解析と新たなインスリン分泌調節機構の解明
Project/Area Number |
23390146
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
村上 正巳 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30241871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 孝穂 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (90396656)
奈良 誠人 群馬大学, 医学部, 助教 (80420165)
荻原 貴之 群馬大学, 医学部, 助教 (80361377)
角野 博之 群馬大学, 医学部, 講師 (10375579)
荒木 修 群馬大学, 医学部, 医員 (80589482)
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Keywords | 糖尿病 / 遺伝子 / 一塩基多型 / インスリン / 甲状腺ホルモン |
Research Abstract |
我々は地域住民を対象に糖負荷試験を実施してインスリン分泌能ならびにインスリン抵抗性を解析し、エネルギー代謝に関わる遺伝子の一塩基多型(SNP)との関連について新規遺伝子解析技術であるSmartAmp法を用いて検討した。その結果、細胞内局所で甲状腺ホルモンのT4をT3に変換して活性化する2型甲状腺ホルモン脱ヨード酵素(D2)の遺伝子のThr92AlaのSNPがインスリン分泌能の低下に関連していることが明らかとなった。D2が骨格筋や褐色脂肪組織に発現していることから、これまではインスリン抵抗性とD2の関連について研究が進められてきたが、今回の我々の解析結果はインスリン分泌調節におけるD2による甲状腺ホルモン活性化の役割の可能性を示唆するものである。我々は、膵ラ氏島のβ細胞にD2が発現している可能性を推測し、培養マウス膵β細胞を用いて検討したところ、D2の酵素活性とD2 mRNAの発現を認めた。さらに、インクレチンであるGLP-1を添加したところ、培養膵β細胞からのインスリン分泌の増加とともに、D2の酵素活性とD2mRNAが増加することが示され、この刺激には細胞内のcAMPが関与することが明らかとなった。これらの成績は、膵β細胞内においてD2によってT4からT3への変換という甲状腺ホルモンの活性化がGLP-1受容体-cAMP系を介して制御されている可能性を示唆しているものと考えられる。今後は、培養細胞および実験動物を用いてインスリン分泌調節におけるD2による甲状腺ホルモン活性化の役割を検討し、甲状腺ホルモンに応答する遺伝子を探索する予定である。本研究の成果により、糖尿病の病態におけるD2による甲状腺ホルモン活性化の役割が解明されるとともに、インクレチン関連薬のインスリン分泌調節機構ならびに膵β細胞保護機能の機序の一部が明らかとなり、糖尿病治療の進展につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養マウス膵β細胞の解析を行い、膵β細胞におけるD2の酵素活性と遺伝子発現が確認された。さらに、膵β細胞におけるインクレチン-cAMP系を介するD2の新たな発現調節機構が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続いて多数例の地域住民の健診受診者と糖尿病症例についてD2遺伝子の一塩基多型検討し、臨床経過、病態、インスリン分泌能について解析する。 我々の保有する培養マウス膵β細胞を用いて、D2のインヒビターであるiopanoic acidならびにsiRNAを用いてD2の酵素活性を阻害し、GLP-1をはじめとする糖尿病治療薬によるインスリン分泌をはじめとする膵β細胞機能の調節におけるD2の活性阻害による影響を検討し、膵β細胞機能調節におけるD2による甲状腺ホルモン活性化の役割を解明する。 膵β細胞におけるD2の生理的役割を個体レベルで解析することを目的として、D2ノックアウトマウスを用いて野生型マウスと比較検討する。野生型マウスとD2ノックアウトマウスのそれぞれに対して糖負荷ならびにGLP-1受容体作動薬をはじめとする薬物の投与を行い、血糖ならびにインスリン分泌に及ぼす影響を検討し、D2のインスリン分泌をはじめとする膵β細胞機能における役割を解明する。
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Research Products
(6 results)