2011 Fiscal Year Annual Research Report
革新的3次元プロテオーム解析法による心血管疾患の病態解明
Project/Area Number |
23390204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 亨 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (90359620)
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Keywords | 循環器・高血圧 / 蛋白質 / プロテオーム / ストレス / トランスレーショナル・リサーチ |
Research Abstract |
ポストゲノム時代を迎えた現在、研究対象は応用ゲノム、なかでも蛋白質へと主眼が移りつつある。心血管病態は多様なため、蛋白質の解析が最も期待できる領域のひとつであるが、十分な解析が進んでいない。申請者は、世界でも有数のプロテオーム解析法の先駆者として、同技術を心血管病態の解析にいち早く導入してきた実績を有する。本研究では、疾患病態制御の解明を目指し、心血管系の疾患関連蛋白質の解析を行う。従来のプロテオーム解析は、経時的変化まで考慮しない質的(等電点pI値、分子量等)・量的変化を主に解析する2次元的な解析が中心であったが、本研究では病態解明に必要な経時的解析を考慮した革新的な3次元プロテオーム解析を行う。必要な技術の開発と導入を予備検討で既に行っている。心血管疾患の病態制御の理解を目的としており、病態関連蛋白質の新規発見ないし病態メカニズムの解明ならびに臨床応用を目指す。 平成23年度は、分析試料として、心血管疾患を有する患者血液検体、動物モデル(遺伝子改変マウス等)、また病態を反映する細胞モデル系(培養細胞系等)の3種類を用いた。特に、経時的な観点を重視して試料を収集し、分析を進めた。すなわち、細胞ないし動物モデルでは薬剤介入後あるいは病態刺激後の経時的な解析、またヒトでも同様に治療介入等による経時的な変化を追求した。分析手法として、分離・濃縮を行うターゲット・プロテオームの方法と、網羅的プロテオーム解析の方法をとった。 また、診断法の開発のために、上記と並行して分析条件の最適化を図り、検出感度および精度の向上を目指した。診断に質量分析計を用いることを考えた場合、どの質量分析計が本診断法に適しているのかということについても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、心血管疾患を有する患者の治療前の血液検体を分析し、経時的な視点からこれらの患者の治療後の追跡調査を行っている。一例として、検体中に含まれる極めて微量の因子を対象とし、抗体を用いて分離・濃縮を行うターゲット・プロテオームの手法を検討している。また、MALDI-TOF-MSと三連四重極型LC-MSの比較を行うため、LC-MSの分析条件をSIM(選択イオンモニタリング)モード、MRM(多重反応モニタリング)モードの両方において検討している。現在までに、標品を用いて、両者ともにfmolオーダーを検出しうる条件を見出すことが可能となったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、臨床検体の分析を引き続き行う一方で、前年までに得られた疾患関連因子について、疾患プロテオーム解析の方法論に基づき、その生理活性の検討を行い、疾患病態への関与を調べる。一例として、その因子の組織における免疫組織化学的検討、その因子の有無での細胞内シグナル伝達系の促進や阻害の検討といった分子レベルでの検討と、心血管疾患において重要な働きをしていると考えられている細胞活性について検討する。
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