2012 Fiscal Year Annual Research Report
肺組織幹細胞への再分化転換機構を応用した炎症性肺疾患の新規治療法の開発
Project/Area Number |
23390219
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 利明 東北大学, 大学病院, 准教授 (10280926)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 肺組織幹細胞 |
Research Abstract |
細気管支幹細胞は気道上皮の修復に重要と考えられている肺組織幹細胞である。2001年にvCE細胞、variant CCSP (Clara cell secretory protein)-expressing細胞、として発見され、その後の研究によって、気道分岐部のNEB (neuroepithelial body)や終末細気管支のBADJ (bronchioalveolar duct junction)のニッチに存在することが分かってきた。気道上皮細胞の細胞平均寿命は約100日と長いため、細気管支幹細胞は通常ほぼ静止状態にある。そして、細気管支幹細胞は緩やかに自己増殖を繰り返しながら、クララ細胞だけでなく、粘液細胞や線毛細胞へ分化している。肺炎症による気道傷害が生体内に発生すると、細胞供給を増やすために、細気管支幹細胞の自己増殖や分化が促進され、さらには一旦分化したクララ細胞が細気管支幹細胞へと再分化転換を起こす。しかし、細気管支幹細胞への再分化転換機構の詳細はよくわかっていない。われわれはこれまで、クララ細胞で発現している蛋白分解酵素SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)を取り上げ、肝細胞増殖因子の産生を刺激する作用など、蛋白分解酵素では説明できない多彩な生理機能をSLPIについて報告してきた。さらにその研究の一環として、「SLPIは細気管支幹細胞からクララ細胞への分化を促しているが、逆にSLPIの阻害は細気管支幹細胞への再分化転換を促す」ことを見い出した。そこで当該研究では、この再分化転換機構の分子メカニズムを明らかにすることを目指す。そして当該年度では、SLPIの下流シグナルとして再分化転換に関わる因子を同定する目的で、SLPI欠損マウスの肺細胞を用いてマイクロアレイ解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究では、細気管支幹細胞の再分化転換機構の分子メカニズムを明らかにすることを目指しており、当初の計画では、平成24年度以降に、SLPIとの結合が疑われている18個の蛋白質をsiRNAでin vivoノックダウンすることによって、SLPIの下流シグナル分子を明らかにする予定であった。しかし、その実験を行う前に、SLPIの下流シグナル分子をより網羅的にスクリーニングすることが、当該研究全体の推進に有益と考え、SLPI欠損マウスの肺細胞を用いてマイクロアレイ解析を行った。この実験により、SLPIの下流シグナルに関連していると疑われる遺伝子群を同定することに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該研究では、細気管支幹細胞の再分化転換機構の分子メカニズムを明らかにすることを目指しており、当初平成24年度以降に計画していたin vivoノックダウンの前に、今年度はSLPI欠損マウスの肺細胞を用いたマイクロアレイ解析を行った。今後は、当初予定していた18個のSLPI結合分子群に、今回のマイクロアレイ解析で同定した遺伝子群を加え、それらの中から、SLPIの下流シグナル分子を幅広く調べていく予定である。
|