2012 Fiscal Year Annual Research Report
リンパ球チップを用いたウイルス感染症に対する個の免疫医療の基盤技術の開発
Project/Area Number |
23390264
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
村口 篤 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20174287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 裕幸 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (60186210)
小澤 龍彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10432105)
北島 勲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50214797)
二階堂 敏雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50180568)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 感染症 / リンパ球チップ / 免疫治療 / 抗体遺伝子 / TCR遺伝子 |
Research Abstract |
【1】抗原特異的T細胞の単一細胞の検出法(T-ISAAC)の確立 抗原特異的T細胞を検出することを目的として、3種類の検出法、すなわち、1)MHC/ペプチド五量体(MHC/p)をT細胞へ結合させ、セルソータを用いて単一細胞を分離する方法、2)抗原でリンパ球を刺激し、サイトカインの産生を指標にセルソータを用いて単一細胞を分離する方法、3)抗原でリンパ球を刺激し、サイトカイン産生を細胞チップを用いて単一細胞を分離する方法(T-ISAAC法)を確立した。成果として、1)および2)により、50%以上の正確性で、抗原特異的T細胞を取得できる方法を確立した。 【2】単一T細胞からの効率的なTCR遺伝子取得法の確立 単一T細胞からのTCR遺伝子増幅はRT-PCR法により行われてきたが、RT-PCRを行うためにはTCR 5’側の特異的プライマーを設計する必要がある。TCR 5’側は約50種類以上の配列があるため最適なプライマーの設計が困難であった。我々は、当教室で開発した単一細胞5’-RACE法(Ozawa T, BioTechniques, 2006)を応用し、TCR遺伝子を増幅する方法を確立した。また、これまでの研究結果から、シングル細胞を従来の方法でRT-PCRを行うと、TCR遺伝子を単離できる確率は1/10以下であった。そこで、この困難を克服するために、T細胞をあらかじめ活性化(IL-2/PHA)しておき、単一細胞5’-RACE法を行うことで、TCRα/TCRβのペアーを80%以上の確率でクローニングできる方法を確立した。現在、他の活性化方法について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、トリインフルエンザ、エイズなどの新興・再興感染症や天然痘などの細菌兵器が、人類にとっての新たな脅威となってきている。これらの感染症や細菌兵器の治療戦略として免疫遺伝子治療が期待されている。本研究は、我々が独自に開発した「リンパ球チップ」という抗原特異的リンパ球単離技術を応用し、感染症患者の血液や組織から、病原菌特異的ヒトTリンパ球を効率良く同定し、そのリンパ球からT細胞受容体(TCR)を迅速(1-2週間)に単離し、ウイルス感染症に対する個の免疫医療の道を開くための基盤技術を確立することを目的としている。本年度は、以下の2つの課題に取り組んだ。 まず、抗原特異的T細胞の単一細胞の検出法(T-ISAAC)の確立を達成するために、抗原特異的T細胞を効率良く検出することを目的として、1)MHC/ペプチド五量体をT細胞へ結合させ、セルソータを用いて単一細胞を分離する方法、2)抗原でリンパ球を刺激し、サイトカインの産生を指標にセルソータを用いて単一細胞を分離する方法を確立した。成果として、50%以上の正確性で、抗原特異的T細胞を取得できる方法を確立した。研究の達成度は100%である。 次に、単一T細胞からの効率的なTCR遺伝子取得法を確立するために、従来の単一T細胞からのTCR遺伝子増幅に用いられたRT-PCR法の代替法として、当教室で開発した単一細胞5’-RACE法(Ozawa T, BioTechniques, 2006)を応用し、TCR遺伝子を増幅する方法を確立した。また、シングル細胞からTCR遺伝子を単離できる確率を向上するために、抗原特異的T細胞をあらかじめ活性化しておき、単一細胞5’-RACE法を行うことで、TCR遺伝子を80%以上の確率でクローニングできる方法を開発した。現在、他の活性化方法について検討中である。達成度は80%である。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】抗原特異的T細胞の単一細胞の検出法(T-ISAAC)の確立 抗原特異的T細胞を検出することを目的として、抗原でリンパ球を刺激しサイトカイン産生を細胞チップを用いて検出し単一細胞を分離する方法(ISAAC法の応用:T-ISAAC)の確立を目指す。 従来のセルソータを用いる方法は、短時間で細胞を分離できるという利点があるが、目的細胞の頻度が低い場合、バックグランドノイズに隠れてしまうという欠点がある。T-ISSAC法は、細胞を分離するのに約半日費やするが、シグナルの形状でノイズを判別できるため、目的細胞頻度が非常に低い場合でも確実に目的細胞を検出できるという利点がある。さらに、患者からの少量のサンプルに対応できる可能性がある。最終成果として、T-ISAAC法で50%以上の正確性で、抗原特異的T細胞を取得できる方法の確立を目指す。 【2】取得TCRの機能解析法の確立 取得したTCRの機能を解析することを目的として、1)増幅したTCR遺伝子を相同組換え法により発現ベクターに組込み、レトロウイルスを用いてTCR欠損のT細胞株(TG40)にTCRα/TCRβ遺伝子を導入し、TCR/CD3分子を膜に発現させる。TG40には、あらかじめ、ヒト/マウスのCD4あるいはCD8遺伝子を導入しておく。2)次に、TCR導入TG40細胞を、ペプチドを発現させた抗原提示細胞あるいはMHC/ペプチドで刺激し、活性化マーカーCD69の発現あるいはIL-2産生能を測定することで、TCRの機能を解析する。この解析法が可能になれば、抗原特異的T細胞の検出から、TCR遺伝子の取得・機能検証までを全体として約10日間で行える画期的なシステムが確立される。従来法では、抗原特異的TCR遺伝子を取得するまでに約3カ月以上も要したので、約1/10の期間でTCR遺伝子を取得することが可能となり、本方法は画期的といえる。
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Research Products
(15 results)