2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代型統合的ゲノム解析による食道癌の治療効果予測アルゴリズム構築と分子標的探索
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23390325
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
井本 逸勢 (橘 逸勢) 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30258610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹黒 章 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10197593)
楊河 宏章 徳島大学, 病院, 准教授 (50263827)
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Keywords | 食道癌 / ゲノム / 遺伝子 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
食道扁平上皮癌(ESCC)の「個別化医療」実現のため、詳細な臨床情報を付帯した高品位臨床検体を対象に次世代テクノロジーを駆使して抽出するOmics情報から、ESCCの新たな悪性度や治療効果予測アルゴリズムを構築すると共に分子標的治療の標的遺伝子候補探索を目的に研究を推進し、以下の成果を得た。 1.ESCC臨床例からの臨床検体と派生するバイオリソース、臨床情報収集 Omics解析対象となる体系化されたプロトコールで治療されたESCC臨床例についての凍結組織とパラフィン包埋組織の収集ならびに臨床情報データベース作成は、今年度、(1)術前化学療法または化学療法単独(Docetaxicel+S-1+Cisplatin)145例、(2)術前化学放射線療法または化学放射線療法単独(同)33例、ならびに(3)化学放射線療法(5-FU+Nedaplatin)100例について行った。機能ゲノム解析に用いるため、ERSCC細胞株42種を含む癌細胞株も収集した。 2.ESCCのOmics解析 次世代シーケンサーによる配列解析、アレイによるゲノムコピー数・DNAメチル化解析、次世代シーケンサー・アレイによる遺伝子発現解析の技術導入と独自の情報解析パイプラインの整備を行い、統合解析が可能なシステムを構築した。これらを基盤に、実際に臨床検体と細胞株について、ゲノム・エピゲノム解析、mRNA/miRNA遺伝子発現解析を進め、デジタルデータの収集を行った。この過程で、ESCCの新規予後予測コピー数異常マーカニを同定した(論文投稿中)。さらに扁平上皮癌として口腔癌、あるいは乳癌や肝癌などESCC以外の腫瘍についても解析プラットフォームが有用であることを確認し、口腔癌におけるエピジェネティックな発現抑制を受ける癌抑制型miRNA(miR-218など)。をはじめ、複数の癌抑制miRNAを報告した。これらの結果から、本課題で構築されたシステムにより1で収集したESCCの解析を継続することで、ESCCの診断・治療標的同定が達成可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体系化されたプロトコールで治療されたESCC臨床例の収集は、計画を上回って進行している。また、ゲノム・エピゲノム解析も技術・情報解析プラットフォームの構築が計画通り進み、そのパフォーマンスも確認され、実際に報告可能な成果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、申請時に24年度以降に計画した通り、臨床症例リソース収集とOmics解析を継続すると共に、ESCC臨床例のOmics情報と臨床情報との統合情報解析を基盤として、さらに診断・治療標的候補の同定を進め、治療効果アルゴリズムの構築とそのバリデーションならびに治療標的候補癌関連遺伝子の探索を行う。既に次世代シーケンサーによるゲノム配列・発現解析は充分利用可能になっており、アレイによるエピゲノム解析と組み合わせた高感度、高精度の解析系が確立できている。また、申請時に予測される困難点の一つに挙げた臨床症例数の集積不足については、23年度ですでに克服されていることから、より効率的な研究の推進が期待される。一方で、exosomeについては腫瘍や病期特異性や感度が不十分であり、細胞株培養上清を用いた基礎的検討に力を入れる。
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Research Products
(10 results)