2011 Fiscal Year Annual Research Report
膠芽腫の分子標的治療耐性関連遺伝子群の機能解析とそれに基づく新規治療法の創出
Project/Area Number |
23390343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武笠 晃丈 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (90463869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 実 東京大学, 医科学研究所, 講師 (50332581)
齊藤 邦昭 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50446564)
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Keywords | 膠芽腫 / 分子標的療法 / 治療耐性 / EGFR / 脳腫瘍幹細胞 |
Research Abstract |
神経膠腫臨床材料におけるSDeltaE発現解析を行うにあたり、東京大学脳神経外科及びその研究協力施設の脳腫瘍臨床検体の基本的な遺伝子やゲノム異常の解析をまず行った。なかでも、神経膠腫に異常の頻度が高いと知られている、IDH遺伝子、TP53遺伝子の変異や染色体1p19qのヘテロ接合性の消失(LOH)などについての解析を施行して、それぞれの異常の頻度や相互関連を明らかにすることで、SDeltaE発現解析をする臨床検体の特徴を精査した。これらの研究途上において、特に星細胞腫においては、ATRX遺伝子の変異が、乏突起膠腫においてはCIC遺伝子、FUBP1遺伝子の変異、小児膠芽腫においてはH3F3A遺伝子の変異が高頻度ということが報告されたため、一部の検体においてはこれらも確認し、これまでの報告と矛盾のないことを明らかにした。 また、SDeltaE遺伝子発現解析をする対象としての、脳腫瘍幹細胞株の樹立を手術採取検体より順次行って、さらに、これらの細胞株の性質を調べるために、マウス脳内への移植を行い、その腫瘍形成能につき検討を行った。また、これらの細胞株において腫瘍原性の源になるEGFRの発現や、幹細胞性を反映するCD133などのマーカーの発現を確認した。 以上のような、ヒト悪性神経膠腫臨床材料や患者より単離・培養した脳腫瘍幹細胞株に加え、対象となる正常組織や良性腫瘍を加えて、SDeltaEs遺伝子についてその発現を確認したところ、悪性度の高い組織においてmRNAの発現量が高いことが、いくつかのSDeltaE遺伝子において確認でき、またSDeltaE1遺伝子においては、腫瘍原性の高い脳腫瘍幹細胞株で、その発現が亢進していることが確認された。これにより、これらSDeltaE遺伝子の腫瘍原性への関与が見込まれたため、今後のさらなる検討により、良い治療標的になりうることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一段階として、平成23年度の達成目標は、これまでに同定した既知及び未知の、分子標的治療耐性に関連する遺伝子群(SDeltaEs)の発現が、脳腫瘍細胞株、ヒト悪性神経膠腫臨床材料、ヒト正常組織、患者より単離・培養した脳腫瘍前駆細胞様細胞株(脳腫瘍幹細胞)において上昇しているか(もしくは活性化を受けているか)を、遺伝子および蛋白レベルで明らかにし、臨床材料では、実際の患者の治療経過・予後の情報などとの関連を調査することである。実際に多くの臨床脳腫瘍検体、正常組織、従来からある脳腫瘍細胞株、樹立した脳腫瘍幹細胞株などを用いて、その悪性度とSDeltaEs遺伝子群との発現の関係を調査することができたため、ほぼ予定した目標を達成しえたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究の第二段階として、SDeltaE遺伝子群のうち機能が明らかでない分子について、その働きを阻害または活性化させることで、腫瘍の増殖が抑制または促進されるかを、in vitro 及びヌードマウスにおける腫瘍形成能などを指標に解析し、新たな標的治療となるべき遺伝子の候補を絞り込むことを目標とする。また、腫瘍増殖能に関連していることが判明した分子に対して、EGFRとのcombined targeted therapy を該当する細胞株に対して、in vitro 及びin vivoで行い、臨床応用への可能性を探りたい。
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