2012 Fiscal Year Annual Research Report
バイオミメティック潤滑界面を実装した次世代人工股関節に関する基礎研究
Project/Area Number |
23390359
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茂呂 徹 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20302698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森崎 裕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30508099)
大嶋 浩文 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00622359)
石原 一彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90193341)
金野 智浩 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80371706)
橋本 雅美 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (20450851)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / バイオテクノロジー / 運動器 / 関節 / ナノバイオ |
Research Abstract |
本研究の目的は、次世代人工股関節として、「高潤滑能をもつバイオミメティック人工股関節」に関する基礎研究を行うことである。今年度は、以下の検討を行った。 1.PMPC処理の金属・セラミックス表面への応用:1) 金属表面の至適PMPC処理条件の検索:コバルトクロム合金のPMPCによるナノ表面処理について、処理方法および処理条件を変化させ、最適化を行った。 2) PMPC処理金属表面の潤滑性の評価:摩擦試験を行い、1-1)で構築したPMPC層の潤滑性を評価した。コバルトクロム合金表面に形成したMPC層と、ポリエチレン、コバルトクロム合金、生体軟骨表面との摩擦特性を評価した。さらに、手術後の歩行を再現する股関節シミュレーターを用い、PMPC処理表面の耐摩耗性の評価行った。 2.潤滑性の向上を目指した新規摺動面形状の開発:1) 溝つき人工股関節表面の潤滑性の評価:ポリエチレンライナーの表面の機械加工痕(マシンマーク)の深さが、PMPC処理による高潤滑能に与える影響について、摩擦摩耗試験による評価を開始した。2) 陥凹部設計の因子が高潤滑能に与える効果の検討:陥凹部の大きさ・位置・深さが摺動界面においてどのような役割を果たすか検証した。その結果に基づいて、モデルとして考案される関節窩構造をもった人工股関節摺動面の形状の妥当性について検討した。3) 関節窩構造を有する人工股関節摺動面の開発:23年度に作製した「関節液を貯留し潤滑を促進する構造」を有する架橋ポリエチレン製のライナーの関節摺動面にPMPC処理を加え、股関節シミュレーター試験による耐摩耗性の評価を開始した。 以上の結果は、「高潤滑能をもつバイオミメティック人工股関節」の実用化へ向けた基礎検討を推進するための確信を得るに十分な結果であった。平成25年度は、上記の検討を継続するとともに、セラミックスについても検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PMPC処理の金属・セラミックス表面への応用では、ナノメーター単位の表面処理について、至適処理条件を確立し、表面の潤滑が改善することを確認した。 潤滑性の向上を目指した新規摺動面形状の開発では、マシンマークの深さ、関節摺動面の陥凹部設計(関節窩構造)について検討し、これらがPMPC処理による高潤滑能に与える影響についての解析を進めている。 以上のように、本研究課題は、研究立案時の年次計画に沿って研究が進展しているため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ミクロな視点からのバイオミメティック:PMPC処理の金属・セラミックス表面への応用 1) 金属・セラミックス表面の至適PMPC処理条件の検索:PMPC処理によって形成するナノメーター単位の表面層について、プロセスの最適化を行う。処理方法および処理条件を変化させ、a)X線光電子分光分析、b)赤外分光分析、c)水による静的接触角測定、d)ローダミンで染色した表面の蛍光顕微鏡による観察、e)透過型電子顕微鏡による処理層の厚みの測定、を行う。 2) PMPC処理金属・セラミックス表面の潤滑性の評価:ISO、ASTMの規格に準じた摩擦・摩耗試験を行い、以下の項目の評価により、PMPC処理表面の潤滑性・耐摩耗特性を評価する。対向する表面には、ポリエチレン、コバルトクロム合金、生体軟骨から選ばれる材料を準備して検討する。a)関節面の摩擦係数・摩擦トルクの計測、b)サンプルの重量変化による摩耗量の測定、C)サンプル表面の三次元解析による摩耗の評価、d)サンプル表面の走査型レーザー顕微鏡による摩耗の評価、e)走査型電子顕微鏡によるサンプルの表面性状・表面粗さの評価、を行う。 2. マクロな視点からのバイオミメティック:潤滑性の向上を目指した新規摺動面形状の開発 1) 溝つき人工股関節表面の潤滑性の評価:ライナー表面の機械加工痕と対向する骨頭とがつくるマイクロメーター単位の関節液の貯留が、「PMPC処理による耐摩耗性の改善に与える影響」について、潤滑特性の評価などから検討を継続する。 2) 陥凹部設計の因子が高潤滑能に与える効果の検討・関節窩構造を有する人工股関節摺動面の開発前年度までに検討した「関節液を貯留し潤滑を促進する構造(関節窩構造)」を有する人工股関節摺動面について、本研究にて処理条件の最適化を行ったPMPC処理と組み合わせて摩耗試験を行い、摩耗抑制効果について検討を行う。
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