2012 Fiscal Year Annual Research Report
口腔がん細胞で破綻しているARE-mRNAの核外輸送及び安定化機構の解明
Project/Area Number |
23390416
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸塚 靖則 北海道大学, -, 名誉教授 (00109456)
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 口腔がん / pp32r1 / HuR / pp32 / 結合タンパク / 安定化 / ARE-mRNA |
Research Abstract |
本研究では、口腔がん細胞で起こっているARE-mRNA輸送・安定化のメカニズムをARE-mRNAと相互作用しているRNA結合タンパクHuRや、pp32などを介した解析を展開することにより解明し、またそれらを制御することにより新しいがんの治療法を開発することを目的とする。本年度は、以下の知見が得られた。 1)HuR結合蛋白の解析: 研究計画に従い、Oral cancer specific HuR associated protein (OSC HuR AP)を単離するために、FLAG tagを持つHuR を作成し、口腔がん細胞及び正常細胞にFLAG-HuRを恒常的に発現するシステムの構築を試みたが、正常細胞ではできなかった。そこで、HuRと結合することが知られているpp32のファミリーpp32r1にターゲットを絞り、その結合を解析した。その結果、pp32r1はpp32と同様にHuRと結合でき、競合実験によりpp32r1の方がかなり強くHuRに結合することもわかった。さらに、研究計画にも述べたHuRとアクチンとの結合も調べ、がん細胞では両タンパクが結合できないことを再確認した。 2)pp32r1の解析: 次に、pp32r1の解析を行った。口腔がんを含むがん細胞のpp32r1の発現を確認した。その結果、がん細胞ではpp32r1の発現が顕著に高く、正常細胞ではほとんど発現していなかった。また、pp32r1はがん細胞の細胞質に多く局在することもわかった。さらに、口腔がん細胞にpp32r1を発現させ、軟寒天コロニー中でがん細胞の培養を行った結果、軟寒天中でもよく生育しpp32r1が足場非依存性増殖能を強化することがわかった。 これらの解析より、HuRにはpp32r1が強く結合することがわかり、pp32r1はがん細胞の悪性化に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔がん細胞におけるARE-mRNAの核外輸送・安定化のメカニズムを解明するため、本年度はARE-mRNAに直接結合してその輸送に関わるHuRタンパクと、それに結合するpp32とそのファミリーpp32r1について口腔がん細胞を用いて解析した。pp32r1がpp32と同様にHuRと結合できたのは興味深い。細胞に強い致死性の刺激が加わると、HuR-pp32複合体は細胞質に移動し、HuRが分解されるという報告がある。従って、pp32r1に関してもHuRと結合することにより、HuRの分解に関して何らかの役割を持つ可能性が高くなった。pp32r1は以前より細胞がん化に関わるタンパクと考えてられており、本研究で、主にがん細胞でpp32r1の発現が高かったことは意義深いと考える。またpp32r1を発現させた口腔がん細胞の足場非依存性増殖能が上昇したことは、pp32r1の発がん活性をさらに証明したことになるため貢献度が大きいと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、口腔がん細胞で起こっているARE-mRNA輸送・安定化のメカニズムをHuRとpp32r1を介した解析を展開することにより解明したい。上述の様に、細胞にスタウロスポリンなどの致死性ストレスが加わると、HuR-pp32の複合体は核外に輸送され、細胞質でcaspaseによりHuRが分解される。そこで口腔がん細胞を用いて、pp32r1が発現している状態で、致死性ストレス下でのHuRの細胞質での局在や分解を検討する。その検討でHuRの分解に影響があれば、HuRの分解に関わるcaspaseの働きを解析したい。次に、刺激を加えないがん細胞でも同様にpp32r1の発現によりHuRの局在および分解に変化があるか検討する。これらの解析で、がん細胞でpp32r1の働きによるHuRの分解制御が明らかになる可能性があると考える。さらに、pp32r1をノックダウンするためのベクターの開発にも取り組みたい。
|