2011 Fiscal Year Annual Research Report
癌幹細胞を制御する転写因子Brachyuryを標的とした口腔癌分化誘導療法の開発
Project/Area Number |
23390465
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉浦 剛 九州大学, 大学病院, 講師 (40322292)
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Keywords | 癌幹細胞 / Brachyury / 口腔癌 |
Research Abstract |
癌幹細胞は、放射線治療や化学療法に耐性を示し、転移再発の原因となると考えられている。これまでの研究から、癌幹細胞の維持・制御に中心的に関わる転写因子Brachyuryを世界に先駆けて見出した。本研究では治療への展開の為に (1)Brachyuryを用いた口腔がん幹細胞を治療標的とする新しい治療概念を確立する (2)癌選択的なBrachyuryノックダウンの治療法を確立する。ことを目的としている。本年度は目的(1)を展開するために1.口腔癌組織におけるBrachyury発現と予後との相関の検討2.癌幹細胞の放射線および化学療法耐性のBrachyuryノックダウンによる克服について検討を行った。 1.口腔癌組織におけるBrachyury発現と予後との相関の検討 扁平上皮癌(SCC)152例の未治療生検組織におけるBrachyury、E-cadherin、Vimentinの発現様式を免疫組織化学的に検索した。Brachyury発現と関連を認めたものは、腫瘍の大きさ(T分類)、リンパ節転移、腫瘍の分化度、腫瘍の浸潤様式(いずれもp<0.05)であった。単変量解析において、リンパ節転移はすべての分子と相関し、特にBrachyury発現(p=0.001,オッズ比4.390)と最も強く相関していた。5年生存率、無病生存率はBrachyuryの発現と強い相関が認められた。 2.癌幹細胞の放射線および化学療法耐性のBrachyuryノックダウンによる克服 癌幹細胞様細胞ACCS-M GFPを用いて、癌幹細胞の化学療法、放射線治療に対する治療抵抗性が明らかになった。Brachyuryをノックダウンする事により、(1)放射線化学療法に対する感受性亢進(2)浸潤能の抑制、造腫瘍性抑制による転移巣形成の阻害を認め、癌幹細胞様細胞を標的とした遺伝子治療法を開発できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の結果によりBrachyuryを用いた癌治療が可能であることが示唆された。 当初の予定では治療概念の確立が本年度の目標であったためほぼ達成と考えてよいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
治療への実際の展開について技術的な開発を行う予定である。遺伝子導入について効率のよい、副作用の少ない、選択性のある方法を検討する予定である。 逆に癌幹細胞の分離技術については困難が多い。細胞種によって細胞膜表面分子の発現様式が異なる為と考えられる。現状ではin vivo selection法がin vivoとin vitroの両面で再現性の良い細胞集団を得ることが可能な方法であり、今後もこれを用いて検証を進める予定である。現在は癌幹細胞としては一種類しか樹立できていない為、他の癌幹細胞の樹立を目指す予定である。
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[Journal Article] Involvement of epithelial-mesenchymal transition in adenoid cystic carcinoma metastasis2011
Author(s)
Ishii, K., Shimoda, M., Sugiura, T., Seki, K., Takahashi, M., Abe, M., Matsuki, R., Inoue, Y. & Shirasuna, K
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Journal Title
International journal of oncology
Volume: 38
Pages: 921-931
DOI
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