2011 Fiscal Year Annual Research Report
生物地理学的視点からみた西太平洋島嶼地域の干潟文化の比較研究
Project/Area Number |
23401005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
李 善愛 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (90305863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鯵坂 哲朗 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教 (40144349)
江上 幹幸 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (30320518)
川瀬 久美子 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40325353)
佐藤 慎一 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (70332525)
野中 健一 立教大学, 文学部, 教授 (20241284)
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Keywords | 干潟生態 / 生物地理学 / 漁業技術 / 環境適応 / 文化資源 / 干潟生物 / 地理的固有性 / 環境保全と持続的開発 |
Research Abstract |
本研究では西太平洋島嶼域の干潟生物相のうち、漁業文化形成にかかわる生物に着目し、その生物地理と文化地理の対応を明らかにすることを試みた。そして、マヒーシア・サバ州では、高山が多い熱帯雨林から流れてくる河口域で広大なマングローブ林を形成するが、恒常的に流量が多く、製塩に適した干潟の形成は少ないことがわかった。また、フィリピン・パナイ島および西ネグロス島の干潟ではカキなど泥干潟の貝類採集が活発であり、西ネグロス島では礁池干潟における土産用貝類の採集が近年活発で資源減少が危惧されていた。韓国セマングム地域では、干拓堤防建設に伴う底生動物相の変化を、干潟のカキ類・ハマグリ類・ヌマコダキガイ類・シャミセンヒキ類の貝殻などの日韓比較を行うことで、それらの種群の生息分布パターンの共通点を明らかにした。また、韓国の事例から水産資源利用におけるジェンダーの形成は歴史的、文化的、経済的背景に影響されること、捕鯨文化の歴史をとおして地域文化資源の形成過程の仕組みを明らかにすることができた。有明海および中海では干拓による魚族資源を含めた生態系への影響を強く受けており、漁民たちの環境観も大きく変化している。また、有明海干潟の小動物採集活動調査から太平洋岸の文化地理学的指標となる小動物利用の知見を得ることができた。さらに、九州と沖縄の干潟のポルトガルガキ(日本新記録種)が羽地内海と中城湾泡瀬では種組成が大きく異なっていることから、これまで同種と考えられてきたハボウキ,シラオガイなどは別種である可能性が殻の形態から示唆された。とくに羽地内海干潟は表層堆積物の年代測定で600~680年前頃マングローブ湿地的環境が成立していたことを推測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定とおりに調査地干潟の微地形・生物相・人間活動からみた地生態区分、島嶼部干潟の藻類・貝類相の生物地理の検討、干潟の資源利用にかかわる活動分布の検討、干潟利用と環境適応の分析に取り組み、一定の成果を出しつつある。ただ、予想から外れた調査結果が出たところは再調査あるいは別の調査地を選んで調査し直すことにする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果をふまえて平成24年度以降は、再調査地を含めて新たな調査地のフィリピン(ルソン島中南部)、とパラオなどに広げ、西太平洋島嶼部干潟の藻類・貝類相の生物地理の検討や干潟利用と環境適応の分析を中心に調査を進めていく。
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Research Products
(28 results)