2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23401021
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Section | 海外学術 |
Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
大高 洋司 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (60152162)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 韓国 / 日本 / 古典籍 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
具体的内容:昨年度に引き続き、韓国国立中央図書館において、日本古典籍善本調査と、その成果に基づく交流会を行った。善本調査は、平成24年7月24~25日午前及び平成25年3月18~23日の二度にわたって実施した(加えて、平成24年7月26日、清州古印刷博物館における現地調査を行い、韓国の古印刷文化に関する知見を深めた)。交流会(「第3回日韓古典籍研究交流会」)は、平成24年7月25日14:00~17:00、中央図書館地図資料室において実施し、日本側3名、韓国側1名が報告を行った。日本側の報告内容の一部は、平成24年度内に論文として刊行されている。 意義・重要性:本研究の特徴は、代表者の勤務先である国文学研究資料館を中心とする日本側研究者と、中央図書館古典運営室を中心とする韓国側研究者が協力し合って、研究・交流を進めていることである。善本調査には、高麗大学校をはじめ、韓国において日本古典文学の研究を目指す若手研究者・大学院生が常に参加している。また、最も重要な行事である「日韓古典籍研究交流会」を通じて、双方の研究者は、和古書・韓国古典籍に関する知識を吸収しあっており、それぞれの報告については、主として韓国語の通訳を、専門の近い優秀な研究者に依頼し、一般来聴者にも公開している。その結果、本交流会の認知度は年々高まり、24年度には、参加者が、発足当初の倍となる34名を数えた。旧植民地時代の遺物とはいえ、韓国で今日まで大切に保存されてきた和古書を中心とする古典籍類が、研究交流のための格好の素材となっており、本研究は、徐々に、中国を含めた東アジア書物文化研究への拠点に成長しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、代表者の勤務先である国文学研究資料館が10年以上にわたり行ってきた、韓国国立中央図書館所蔵日本古典籍(朝鮮総督府旧蔵)の調査・収集活動の実績(約1,600点のカード化、約600点のマイクロフィルム化)を踏まえ、先方からの要請により、それらの中から善本(今後の研究に特に役立つと考えられる資料)を選定して、毎年の交流会(7月末頃)において報告、集積した善本解題を冊子化して報告書にまとめると共に、韓国の書籍文化についての知見の吸収を通じて、国際交流の一端を担うことを目的としている。 善本の選定作業は、長期間における両館の信頼関係の上に立ち、毎回日本・韓国の専門研究者十数名の協力を得て、順調に進行している。また、中央図書館のおいて実施される「日韓古典籍研究交流会」は、24年度で3回目となった(本課題採択前の22年度に予備的な交流会を開催)が、参加者は毎年増加傾向に有り、24年度には、ことに韓国の若い日本文学研究者の参加が目立った。日本文学研究の盛んな高麗大学校の支援によるところが大きいが、参加者は、徐々に大学の枠を超えて広がりつつある。また、本交流会が、新たな研究交流を生むきっかけにもなっている。交流会の主要プログラムである善本の選定報告は、どれも充実しており、高いレベルの善本解題に結びつくことが期待される(中には、すでに論文化されたものもある)。さらに、中央図書館古典運営室の研究者による韓国古典籍関係の報告は、日韓研究者の意欲を増大させ、初期の金属活字本や、それらを生み出した韓国印刷文化への理解・関心が格段に深まった。 以上、現段階の達成度は当初予想した以上に高く、今後は一層幅広い交流につながっていくものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25・26年度においては、平成23・24年度の成果を受けて、①「書物(古典籍)」を媒介とした交流活動、②善本解題の執筆・編集作業を推進する。①については、平成25年度は、中央図書館における交流会に加え、中央図書館古典運営室所属の研究者をはじめとする韓国の書誌学研究者を日本に招き、国文学研究資料館において、東アジアの書籍文化をテーマとして研究会を開催する(26年1月頃予定)。②については、総計150~200点程度を目標に、メンバー各自が善本の選定を進めると共に、執筆要項・見本を作成・配布済みである。原則として本年度内に執筆を終え、来年度(最終年度)末の刊行を目指して報告書の編集作業を開始する(編集補助者雇用)。 また、現在本課題に対して、「アジア遊学」(勉誠出版)誌から誌面提供の申し出を受けている。内容の組み立てについて、現時点で具体的な構想は定まっていないが、①・②の精華を盛り込み、社会還元を目指したいと考えている。
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Research Products
(6 results)