2011 Fiscal Year Annual Research Report
エクアドル南部におけるインカ国家の拡大をめぐる実証的研究
Project/Area Number |
23401032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Archaeology
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大平 秀一 東海大学, 文学部, 教授 (60328094)
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Keywords | アンデス先住民 / 植民地時代 / 武力抗争 / 墓 / 儀礼 |
Research Abstract |
申請書の「研究の目的」に記した通り、本研究計画は、インカ国家の行政センター・ラ・ソレダー周辺の諸遺跡ならびに大規模な武力抗争の犠牲者を簡易的に埋葬した3000-5000基の墓の一部の発掘調査を進め、エクアドルにおけるインカ国家の拡大の実体・実状の実証的解明を目的としている。 2011年度夏季には、「研究実施計画」に示した通り、ラ・ソレダー遺跡周辺域において、武力抗争の犠牲者を埋葬した5基の墓の発掘調査を実施した。この内2基において人骨・副葬品が出土し、3基からは墓に伴う遺物は出土しなかった。人骨を含む墓には、ガラス製ビーズそしてインカ期の土器が副葬されていた。スペイン侵入以前のアンデス先住民社会には、ガラスが存在しなかった。したがって、これらの墓はスペイン人と接触した1532年以後に構築されたことが明らかとなった。人骨には、カットマーク(殺傷痕)等、武力抗争の犠牲となったことを証明できる痕跡は残存していなかったが、墓の諸特徴は、犠牲者を埋葬した墓と同質の特徴を呈している。以上のデータは、調査ゾーンにおいて、インカを巻き込んだ大規模な武力抗争が、植民地時代になっても継続して行われていたことを示唆するものとして着目される。 被葬者は、10歳前後(性別不明)ならびに15歳前後(男性)の若年者であった。これまで、インカの行政センターは、各地から集められた労働者集団(成人)と関連付けて捉えられてきたが、得られたデータは、その中に子供も含まれていたことを示している。 なお夏季の調査では、ラ・ソレダーに配された2つのワカ(人工的に加工された聖なる岩)の発掘も実施し、儀礼空間の構築過程に関するデータも採取された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度においては、申請書の「研究実施計画」に記した内容の80%程度を遂行することができたため。年度内に、予定していた出土人骨や土壌の化学分析ができなかったが、これは新年度に入ってすぐに実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以後も、申請書の「研究実施計画」に記した内容にしたがい、ラ・ソレダー遺跡ならびにその周辺域における発掘調査を基盤として、エクアドル・ペルーにおける比較調査(民族誌を含)を加えながら、本研究計画を進めていく。研究計画の大きな変更は、一切ない。また現段階において、研究を遂行する上で問題・障害となっていることはない。
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Research Products
(3 results)