2011 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後の経済・社会・文化の変容と人々の適応ートラジャ族についての学際的研究
Project/Area Number |
23402010
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
細田 亜津子 長崎国際大学, 人間社会学部, 教授 (50331046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 透 拓殖大学, 国際学部, 教授 (00230269)
後藤 治 工学院大学, 工学部, 教授 (50317343)
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Keywords | 紛争 / 文化変容 / 住環境 / 経済構造 / 政策提言 |
Research Abstract |
本研究の目的は、紛争(一般には外部要因による被災)後に経済活動、社会関係、伝統文化がどのように変化するか、その中で人々はどのように影響をうけ、適応するのかという2点についてインドネシア共和国南スラウェシ州トラジャ族を対象として詳細な調査・分析を行い、実証研究としての独自の貢献をなすことである。調査・分析をふまえ、普遍的な概念規定と分析枠組みの提示を行い理論研究としても独自の貢献を成す。新居住地での文化・住環境の変容に人々がどう適応していけるか、また新居住地での生活基盤を支えるための経済構造分析と生存についての経済モデルを提示する。これに基づき実際上の対応方針について関係する政府機関・国際援助機関・民間団体に提言をし、政策研究としても独自の貢献をなすことを目的としている。 23年度は、南スラウェシ州タナ・トラジャ県および北トラジャ県にて紛争後の新居住地に住むトラジャ族の出身地における集落、伝統的家屋、生活形態などを調査した。特に新居住地の聞き取り調査での出身地であるLa'bo村では伝統的家屋を中心にする集落で調査し、文化形態と変容について比較ができた。 一方中央スラウェシ州、ポソ県、テンテナ郡、ペンドロ郡での新居住地での住環境を調査し、野帳にとりまとめた。開拓地での換金作物による収益があるか、経済活動が行われているかを調査した。開拓を始めてからの換金作物による収益はほとんどないが、一部香辛料は市場へ出せるようになった。 紛争後の小学校は新築され、キリスト教とイスラム教の子供たちが同校で教育を受けており、双方の重要宗教儀礼時は休校とし、お互い尊重している。予定していた調査地の他に紛争後のトラジャ族新住居があり、いずれの集落も教会の役割が大きいこと、社会・文化変容は新居住地の地域差があり、紛争後トラジャ族としての意識からパモナ人としての意識が強くなっていたことは大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた調査地は調査できたこと。その上、新たに紛争後の新居住地を調査できたことで、当初以上の新居住者が多いこと、他にも新居住地があることがわかり、次年度の調査に加えることができた。また、トラジャ県、ポソ県での県知事と会見し意見を聞くことができた上に、今後の情報提供のネットワークが広がった。 紛争で逃げた時、紛争後の新居住地での生活を始めた時に重要な役割をになった教会との協力が得られ、今後の新居住地調査のネットワークが強固になった。 トラジャ県内にあるUKI(Universitas Kristen Indonesia)Toroja大学の関係者と本研究について説明し、23年度の調査結果および24年度調査について協力をしていく基礎ができた。 以上のことから計画していた調査と関係者との協力関係を築き、ネットワークの基盤づくりについて成果をあげることができ、次年度調査にいかせる体制作りもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度に他の新居住地について紛争後の農業開発、経済開発の調査を継続する。これと平行し、他の新居住地の住環境についても23年度調査地の比較をしながら測量・調査する。 24年度社会・文化の変容については、23年度の結果を考慮しつつ、より広範で具体的(儀礼、教育、疾病、相互扶助など)について聞き取り調査を個別に行う。また、村の中心である教会と協力を得ながら復興時の人々の生活とあり方など聞き取り調査を実施する計画である。 調査・分析は23年度達成できた協力体制のネットワークを活用する。また、UKI Traja大学の教員および学生の参加を得て新居住地での調査を行う計画である。 これらの結果をUKI Traja大学にて分析および意見交換を行いつつ24年度の取りまとめを行う計画である。
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Research Products
(5 results)