2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23402031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Economic policy
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 隆一郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90181750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 徹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30227839)
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Keywords | 都市開発 / コミュニティ / 環境保全 / 経済発展 / 社会ネットワーク |
Research Abstract |
我々が、日本、イタリア、フィリピンの比較を行う際に、有益な都市開発のモデルと考えているのはイタリアの事例である。本年度は、イタリアにおける現地調査からイタリア都市開発の基本仮説を検討することを出発点とした。その仮説は、「コミュニティと政府の緊密な連繋の下,市場圧力を共同で規制し,景観保護と経済発展の両立を可能にした。コミュニティの政策への参画により,画一的政府規制(simplification)による都市機能の麻痺を回避できた。」というものである。 連繋研究者の村松とともに、研究代表者松原、研究分担者中西がイタリアを訪れ、以下のような実態調査を実施した。すなわち、イタリアにおいても注目すべき都市開発が行われてきたトリノ市、ミラノ市、ボローニャ市を選択し、地方政府とコミュニティの関係について、トリノ工科大学都市論センター、ミラノ工科大学都市工学研究室、ボローニャ大学における専門家からのヒアリングと市長オフィスの関係者やコミュニティ活動者へのインタビューを通じて、地方政府の介入の方策と景観保護のための具体的取り組みを明らかにし、仮説を傍証するに必要な一次資料を入手することができた。そこから明らかになったのは、都市開発における社会ネットワークを活用したコミュニティとの連繋の確保の重要性であり、それを前提として、強力な地方政府の介入の成功が実現しているということである。 これに対して、フィリピンでは,市場経済と政府部門が弱いため,人々が無秩序な開発を行っているように見えるが、社会ネットワークにもとづくコミュニティの規制が働いているというという暫定的な仮説を立て、研究分担者中西が次年度のための予備的調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イタリアについての初年度の研究は、ほぼ計画通りに進み、地方政府の介入におけるコミュニティとの連繋の重要性をあきからにすることができた。この点では、本年度の研究は、概ね期待以上の収穫を得たといえる。 しかしながら、社会ネットワークの詳細なデータの入手については、イタリアについてはできなかったことは残念であった。これはインフォーマント側の都合もあり、調査地の確定作業に時間がかかったためである。また、フィリピンについては、事前折衝はきわめて順調に進んだが、暴風雨のために、実際の調査実施が遅れ、延長を余儀なくされた。自然災害が原因であったとはいえ、その後に調整が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
イタリアについては重要視してきた地方政府、行政側についての研究に必要な一次資料はほぼ得ることができたが、来年度以降の調査では、今回得ることができなかった詳細な社会ネットワーク・データ収集のための補足調査を実施し、厳密な仮説検証を行うつもりでいる。 フィリピンについては、自然災害のため、調査を延長せざるを得なかった。この影響は、主としてマニラについての行政側のインタビューの不足に現れた。今後は、この点の不足を補い、イタリアと日本の比較検討を行うに足る資料を収集するつもりでいる。
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