2012 Fiscal Year Annual Research Report
日系企業のBOP戦略とビジネス生態系モデルに関する研究
Project/Area Number |
23402038
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
林 倬史 国士舘大学, 経営学部, 教授 (50156444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊一 立正大学, 経営学部, 講師 (00547896)
井口 知栄 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (20411209)
金綱 基志 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (50298064)
関 智一 立教大学, 経済学部, 准教授 (50301966)
中山 厚穂 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (60434198)
荒井 将志 杏林大学, 総合政策学部, 講師 (70549691)
伊藤 道雄 立教大学, その他の研究科, 教授 (90386459)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | BOP / ビジネス生態系 / インフォーマルセクター / 多国籍企業 / CARD / マイクロファイナンス / ソーシャル・ビジネス / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
24年度の主要調査は、(1)貧困層に対してマイクロファイナンスの機会を提供することを通して、貧困層の経済的自立化を図る方法と、(2)多国籍企業が現地子会社での事業活動を通して、現地の経営資源が活用され、現地貧困層(BOP)に就業機会と所得の向上を図る方法のどちらが、有効であるのかを実態調査することに置かれてきた。 (1)に対しては、現地NGOの協力を得て、現地最大のマイクロファイナンス機関であるCARD MRIにインタビュー調査を2度行った。さらに、このCARD MRIの協力により、マイクロファイナンスを受けているSari Sari Storeを調査する機会を得た。その結果、こうしたサリサリストアで零細事業を行っている多くの女性たちは、経済的自立化に向けてかなり成功しているように思われた。しかしながら、事業形態はあくまで零細事業範疇であり、不安定就業形態を免れてはいない。 他方、(2)の場合は、現地に進出している日系企業12社を訪問調査した結果、現地の経営資源が、低賃金労働を除いて、ほとんど活用されていないケースが多くを占めていた。主要な部材の多くは、日本、中国から持ち込まれていた。 (1)と(2)の問題意識と課題に対して、調査結果からは、インフォーマルセクターに滞留する多くの人たちが、専門職を身に着けながらいわゆる中間層へと台頭していくメカニズムが(1),(2)双方とも欠落している点であった。 調査研究から見えてきたことは、「現地BOPが経済的にいわゆる中間層へと台頭していくメカニズムは、現地NGOと多国籍企業によるコラボレーションのシステムがより有効となる」という点であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の課題は、基本的に以下の7点である。すなわち、(1)多国籍企業の国際経営戦略とBOP戦略の理論的位置づけと従来の競争戦略論の限界、(2)フィリピン現地企業の自立的経済基盤と多国籍企業との取引構造の解明、(3)貧困削減に果たすフィリピンNGOと経済界(企業)の役割、および両者による協働の現状の分析、(4)企業が共同で設立したNGO「Philippine Business for Social Progress (PBSP)」の組織構造とガバナンス、同NGOによる貧困削減プログラムの内容、メンバー企業(外資系含む)および受益者となる地域住民との関係の分析、(5) フィリピン最大のマイクロファイナンス機関のCARDの貧農女性自立化プログラムの実態と意義、(6)フィリピンにおける企業・NGO協働の最もすぐれた貧困削減モデルの抽出とそのメカニズムの解明、そして(7)日系企業独自の現地NGOとの協働による貧困削減モデルとしてのビジネス生態系モデルの提示、以上である。 以上の7点の主要課題のうち、2011年度、および2012年度は、(1)、(2)、(3)、(4)、そして(5)について、現地調査を踏まえた研究を行ってきた。上記の(4)については、分担研究者の伊藤が、このPBSPと20年ほどの関係を続けており、このプロジェクトチームのリーダーとして貢献している。しかし、PBSPの上部内で伊藤氏と日常的にコミュニケーションをとってきた方が退職したこともあり、同組織内での活動の実態に関する内部情報が入手しにくい状況となってきている。その結果、(4)については現在までの達成度はほぼ50%前後にとどまっている。そのほかの(1)(2)(3)(5)については、計画の70-8の達成度であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は最終年度の当たるので、上記7点の研究課題のうち、残りの(6)(7)に力点を置くと同時に、(1)-(5)についても達成度が不十分であるので、引き続きこれれの課題についても取り組んでいく予定となっている。とりわけ、これらの研究課題の中でも、以下の2点に留意していく。すなわち、(5)のNGO組織、CARD Incが貧農女性の経済的自立化に向けて行っているマイクロファイナンス活動の成果が無視しえない規模になっている点をさらに、明らかにしていく予定となっている。さらに、フィリピン現地に進出している日系企業が現地での事業活動を通してどのようなビジネス生態系を構築しているのかを引き続き目的意識的に解明していく予定である。これらの成果は、2014年9月に東京(明治大学)で開催されるIFSAM(国際経営学会連合)のシンポジュームで報告予定となっている。
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Research Products
(22 results)