2014 Fiscal Year Annual Research Report
失業者への心理的援助プログラムの開発と効果評価-海外の実践に日本文化を融合して
Project/Area Number |
23402057
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 美保 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10549281)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 失業 / 国際情報交換 / メンタルヘルス / プログラム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.失業者のためのメンタルヘルスケアプログラムの実施:平成25年度に開発した失業者のためのメンタルヘルスケアプログラムを3回(1回目(平成26年6月)、2回目(平成26年12月)、3回目(平成27年2月))にわたって実施した。1回目と3回目は昨年から運用をスタートさせた失業支援のためのHPを介して、一般の健常な失業者を対象とし、2回目は就労支援事業を行っている会社と共同で精神疾患を持つ失業者を対象とした。全対象者にプレ、ポスト、1か月後、3か月後と質問紙調査をするとともに、事後のインタビュー調査を行った。2で作成したライフキャリアレジリエンス尺度を効果評価尺度として使用し、いずれの指標もプラスの変化が認められた。ただし、統計的な有意差が出た指標は限られていたことから、一層の改善が必要である。 2.失業プログラムの効果評価尺度の作成:プログラムを評価するに際して必要となる尺度としてライフキャリア・レジリエンス尺度を開発した。平成25年度に行ったインターネット調査を元に尺度を開発し、1の実戦で使用した。なお、尺度は学術誌の掲載が決定している。 3.失業支援のための勉強会の開催:失業者支援の中で特に支援が困難である発達障害に焦点を当て、発達障害の特性も踏まえた支援の在り方について定期的に勉強会を開催した。また、日本の失業支援の特異的要素と思われるマインドフルネスについて英国で体験するとともに、その導入に向けて定期的に勉強会を行った。 4.失業に関する研究の研究成果公表:失業者のメンタルヘルスを検討するために、正規就労者と非正規就労者との比較を行い、結果を学術誌に公表した。また、国際的には、これまでの失業研究の成果の一部を海外の失業研究者と共に英文書籍の1章として公表するとともに、国際学会のシンポジウムで公表、英文学会誌にも掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は失業プログラム実装の年度ととらえていたが、当初2回実施を考えていたところ、3回の実施に至り、予定を上回るペースで実施することができた。ただし、2回分の参加者数は思ったように伸びなかったという課題が残ったものの、全体の進捗としては順調である。また、日本文化の特異性をプログラムに反映させるため、マインドフルネスについて検討を行い、その一部は実装につなげたが、支援として機能させるにはもう一歩の進展が必要である。ただし、開発のための材料はそろってきたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度は3回のプログラム実施が実現したが、成果として優位な効果が認められた指標には限りが見られた。事後のインタビューや銃弾的に行っている質問紙調査のデータをもとに、今後は失業のためのメンタルヘルスケアプログラムをさらに精緻化し、発展させることが課題である。一つは現在のプログラムをパートに分けて、目的と効果を明確化することである。もう一つは対象者の特徴(たとえば精神疾患の有無、疾患別特徴を反映した柔プログラム開発)など、より細かい視点が重要となると考えている。また、これまでの研究成果で得られた知見を直接的にプログラムに参加できない失業者に役立ててもらうために、サイトを使った情報提供を強化するとともに、内外の学会や学術誌や書籍などを通して広く公表していく予定である。
|
Remarks |
失業者支援の一環として、失業に関する学術的な情報を提供するとともに、実践プログラムの登録サイトとしても運用している。
|
Research Products
(14 results)