2012 Fiscal Year Annual Research Report
ルソン島カガヤン流域でのガリー侵食多発と除草剤耐性トウモロコシ普及との関係
Project/Area Number |
23405022
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
南雲 不二男 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (20399372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 慎吉 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (00354043)
内田 諭 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (60425535)
伊藤 一幸 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80355271)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ガリー侵食 / 除草剤耐性トウモロコシ / フィリピン |
Research Abstract |
1)イザベラ州の5郡、10村、計100戸の農家を対象に、除草剤耐性品種の利用、評価、導入前後の作付け体系などについて、聞き取り調査を実施した。その結果、除草剤耐性品種は圃場管理が容易であり、その導入後、開墾可能な土地がある場合には、作付地を拡大したこと、そして開墾可能な残された土地は丘陵地の急斜面であったことが分かった。同様な例が、近隣州 や他の島(Panay 島)でも観察された。この急傾斜地の開墾が原因で、土壌侵食、および降雨の表面流出を増大させている可能性が高い。降雨の表面流出はその斜面下部において、水の集中を引き起こしガリー形成を引き起こす要因になったと考えられる。 2)空間分解能が0.5mであるWorldViewのパンクロマティックデータより、ノイズ除去処理し、エッジ検出したものと、傾斜方向別のテクスチャ値からガリー侵食域の候補を抽出し、さらに、数種類の画像処理によって除外域を設定して、ガリー侵食域の抽出を試みた。その結果、植生との混在地や崖の部分での誤判別はあるが、広域に対し、ガリー侵食密度分布を迅速に求めることに対する有効性が確認された。 3)ガリーが顕著に認められたのは2009年で、台風に伴う例外的な豪雨があった年である。この年の豪雨がガリーの多発をもたらした、と考えることもできる。本研究では、降水量とガリー発生時期との関係を明らかにするため、過去の降水量の時空間変動の特徴を調べた。月別降水量の平年値に対する比を年ごとに求めた結果、TuguegaraoとIlaganでは、2009年の2月と4月に平年値の4.7-6.4倍の降水量があり、これがガリーの形成に影響した可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広域の農家調査の結果から、除草剤耐性品種が未利用急傾斜地へのトウモロコシ畑への拡大の引き金になったことが明らかとなった。さらに、近隣州、あるいは他の島においても除草剤耐性品種の普及とそれに伴う丘陵地へのトウモロコシ畑の拡大が進んでいることが分かった。衛星データの解析により、ガリーを抽出することがほぼ可能になり、より広域への適用が期待される。 以上の結果から、おおむね順調に研究が進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)イザベラ州と同様、近年除草剤耐性品種の普及が進んでいる近隣州、およびパナイ島において、農家への聞き取り調査を実施する。 2)カガヤン流域総合農業研究センター(CVIARC)(イザベラ州、カガヤン郡)に設置した傾斜圃場において、トウモロコシ残渣管理と除草剤散布頻度処理を組み合わせた土壌流出試験を引き続き実施する。 3)衛星データによるガリー侵食域抽出技術の改良を行い、イザベラ州サンロレンソ村とその周辺を含む地域のガリー侵食密度分布図を作成する。さらに、土地利用分布についての情報を作成し、ガリー侵食発生状況との関係を解析する。
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