2012 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける無農薬・無化学肥料・無除草剤による低投入環境保全型水稲栽培の確立
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23405045
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
安田 弘法 山形大学, 農学部, 教授 (70202364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕渕 辰昭 山形大学, その他部局等, 名誉教授 (00250960)
長谷 修 山形大学, 農学部, 准教授 (10261497)
飯田 俊彰 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (30193139)
藤井 弘志 山形大学, 農学部, 教授 (30431646)
佐々木 由佳 山形大学, 農学部, 助教 (40375332)
生井 恒雄 山形大学, 農学部, 教授 (70124609)
佐藤 智 山形大学, 農学部, 准教授 (70444023)
安藤 豊 山形大学, 農学部, 教授 (90005661)
沢田 裕一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (90259391)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境保全 / 資源抵投入 / 自然共生型水田 / 東アジア / 無農薬・無化学肥料 |
Research Abstract |
採択課題は、鶴岡での共同研究、国内での共同研究、海外5ヶ国での共同研究の3つに分けられる。鶴岡では、無農薬・無化学肥料・無除草剤で20年以上イネを栽培している生物の多様性の高いモデル水田を調査地とし、多様な生物の種間相互作用とそれがイネの生育に及ぼす影響を解明しつつある。さらに、多様な生物の役割を解明するため農学部付属農場の水田で要因実験を実施している。これらの調査や実験を通じ水田の多様な生物を活用した自然共生型水稲栽培体系の確立を目的とし、この原理と技術をアジア諸国に普及することを目標にしている。 1)多様な水田湛水部の生物とそれらの種間相互作用がイネの生育に及ぼす影響 湛水生物の種間相互作用とそれがイネの生育に及ぼす影響の一部を解明した。湛水には、藻類を餌とするタニシ、腐食性のユスリカ幼虫とそれらを餌とするドジョウ、ヤゴ、オタマジャクシ、ゲンゴロウ等、多くの捕食者が複雑な種間相互作用を形成している。そして、それらの種間相互作用を通じ各種の個体数が決定され、これらの生き物の糞等、生物由来の窒素がイネの生育を促進していると考えられる。今年度は、水田浮き草のアゾラとドジョウの相互作用が雑草の生育を抑制し、イネの生育に好適であることや、イネの浅植えがタニシなどの生物由来の窒素を効率的に利用することを明らかにした。さらに、水田土壌の層位別肥料の蓄積量の結果から、表層部に向かい、窒素成分などが蓄積されていることが明らかになった。また、自然共生型水稲栽培は慣行栽培と比較すると、害虫のコバネイナゴの発生数が少なく、その発育も劣ることが明らかになった。 2)水田の栽培管理方法がイネの生育に及ぼす影響 鶴岡とハノイでは、水田の水管理を中心に実験し、浅水に管理した方がイネの収量を増加する結果が得られた。今後、この機構について解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、東南アジアのインドネシア(ジョグジャカルタ)、スリランカ(ペラデニア)、ベトナム(ハノイ)の3ヶ国で海外共同研究を開始した。しかし、アフリカのガーナやケニアの研究者も国際共同研究の参加に関心を持ち、これらの国の研究者も参加した海外5ヶ国の共同研究になった。さらにお互いの情報の共有と研究の進捗及び今後の方向性を協議するため山形県鶴岡市の山形大学農学部で、8ヶ国約40名の研究者が参加した第2回国際ワークショップを開催した。これらは当初の計画で予定していなかったことで、これらの実施は当初の計画以上に研究が進展していることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
鶴岡での研究では淡水生物の種間相互作用を明らかにし、これらの生物由来の窒素をイネが最大限活用できる水田生態系のバランスを解明しつつある。本年度は、これまでの研究成果を元に現地試験を実施したが、タニシやドジョウなどの湛水生物が生息せずに生物由来の窒素源が少なく収穫量が低かった。来年度は、タニシなどの淡水生物を放飼し、生物由来の窒素源を増加させるとともに、現地の農家の方々と多面的な協議をし、自然共生型水稲栽培方法の改良と普及を図る予定である。また、海外の5カ国での研究は、1)移植苗本数(1本 or 3本の幼苗)、2)移植方法(疎植の30cm×30cm、密植の30cm×15cm)、3)機械除草回数がイネの生育に及ぼす影響の一般化を試みる予定である。
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Research Products
(4 results)