2011 Fiscal Year Research-status Report
大規模ソフトウェアモデリングのための近似的モデリング手法の研究
Project/Area Number |
23500053
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岸 知二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30422661)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ソフトウェア / モデリング / モデル駆動開発 / プロダクトライン開発 |
Research Abstract |
ソフトウェアモデリングの重要性は一層増しているが、モデル駆動開発などでは従来以上に厳密かつ詳細なモデリングが求められ、大規模化、短納期化している現実のソフトウェア開発においてはモデリング自体の時間やコストが大きくなりすぎている。本研究は「多くの情報量を持ったモデルを整合性のある形にするためのモデリングコストは多大であり、ソフトウェアの大規模化、開発サイクルの短縮、変化の速さなどを考慮すると、厳密な整合性を常に要求するモデリングは現実的でない」という仮説に基づき、アーキテクチャ設計、検証を主対象に、緩やかな整合性を許容する近似的モデリング手法の確立を目指すものである。今年度はまず、モデル間の整合性に関わる問題を整理するとともにモデル間の不整合を扱う過去の研究の調査を行い、基本的な概念について整理した。その中で、モデル間の不整合の状態を示す概念的な尺度として、整合の範囲と整合の強さを定義した。整合の範囲とは複数のモデルの中でどれだけのモデルの間で整合がとれているかを示すものである。一方整合の強さとは二つのモデルがどの程度整合しているかを示すもので、二つのモデルに定義されている概念の対応関係に基づき定義される。こうした範囲と強さを検討するために、モデル間の整合性を俯瞰するモデルマップという手法を提案した。これらを活用し、整合をとるモデルの範囲と強さを調整することにより、最初は狭く弱い整合性で近似的な整合をとり、徐々に整合の度合いを高めるという整合化の戦略を示した。さらに組込みシステムのプロダクトライン開発という状況における具体例を設定し、近似的モデリングを支えるメカニズムに対する基本的な整理を行い、その具体例において必要となるメカニズムの基本的な定義を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は課題や関連研究の調査を踏まえ、近似的モデリングの概念整理を行い、そのモデリングアプローチがどのような戦略でなされるものであるかを明確化できた。さらに具体的な例題に沿ってモデリングメカニズムに対する要件や基本的な定義を行うことができた。特に組込みシステムのプロダクトライン開発という具体例を設定し、具体的に問題を検討したが、これは本来次年度に計画していた事例研究に関する一部の作業に前倒しで着手したものである。モデリングメカニズムの検討はその事例に基づいた検討を中心に行ったため、やや限定的な検討となった側面はあるが、全体としてはほぼ当初計画に進めることができたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿い、具体的な事例を踏まえたアプローチの検討を進めるとともに、それを支援するモデリング環境の整備を行う。具体的には以下を進める予定である。・事例研究の深耕:すでに一部着手した事例研究についてより踏み込んだ調査や検討を進め、近似的モデリングに対する要件明確化や、その有効性に関する検討をさらに進める。・モデリングアプローチやメカニズムの詳細化:手法のより一層のリファインを行うとともに、事例を対象としたモデリングメカニズムの具体的な定義を行う。・上記を支援するための環境(ツール支援、近似性に関するメトリクス定義など)の検討や整備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に関する資料収集ならびに研究成果の発表のために、国内・海外での関連学会への参加を予定している。また支援環境を整備するためにそれに利用するソフトウェア等の購入ならびに状況によっては開発のための人件費としての利用を予定している。
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Research Products
(2 results)