2011 Fiscal Year Research-status Report
非再帰型擬似乱数生成アルゴリズムを応用したハッシュ関数の研究
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23500086
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
谷口 礼偉 三重大学, 教育学部, 教授 (40157970)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ハッシュ関数 / アルゴリズム / 乱数 / 安全性 / 代数方程式 / セキュリティ |
Research Abstract |
非再帰型擬似乱数生成アルゴリズムSSI32は,整数の乗算とシフトの繰り返しによって乱数を発生させているが,このアルゴリズムを長い桁数をもつ乱数生成アルゴリズムしてハッシュ関数に応用するためには,多倍長整数演算を繰り返し行う必要がある。本年度は,その際のパラメータである,1回あたりのシフトのサイズおよび乗算・シフトの繰り返し回数を,新たに導入したワークステーションを用いて解析を行った。その結果,適切なシフトサイズ量および繰り返し回数の選定は重要なファクターであるが,それとともに乗数の最下位ビット(LSB)を1に設定しておくことが,乱数性の向上に重要であることが解析された。このLSB=1の設定は,乗算時における情報のロスを減らす意味もあり,新しく構成されるハッシュ関数の安全性の向上にも関係していると考えている。 新しく構成されるハッシュ関数の安全性の研究に関しては,SSI32アルゴリズムの原型となったSSRアルゴリズムに基づいて構成したSSRハッシュ関数の安全性についての研究を行った。その成果として,ハッシュ関数の入力情報の組み込み部分で行われている排他的論理和の箇所を通常の算術和に置き換えると,ハッシュ関数への入力情報の組み込みアルゴリズムが,入力情報のサイズに対応した次数をもつ代数式となることが分った。その結果,SSRハッシュ関数の安全性(例えば,ハッシュ値の衝突の可能性など)は,代数方程式の解を求めるという数学上の問題に帰されることになった。5次以上の代数方程式の解を求める一般的なアルゴリズムは存在しないので,その意味でSSRハッシュ関数の安全性が保証されることが分った。一方,実際のハッシュ値はコンピュータで計算されるので,固定された有限な桁数の範囲で計算される。これに関連して,アルゴリズムを実際のコンピュータ上に具現化した際の安全性の問題点についての研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいハッシュ関数の構成については,多倍長整数演算の繰り返しに関して,乗算・シフトの繰り返し回数と1回あたりのシフト量の積が,生成されるハッシュ関数のビット長の1.5倍前後以上になれば十分であることが解析の結果分ってきた。また,繰り返し回数を多くするとハッシュ値の生成速度が遅くなるので,繰り返し回数は少ない方が良い。しかしながら,少なすぎるとハッシュ値の乱数特性が悪くなってくる。この現象は,生成されるハッシュ値の桁数が少ない場合顕著になってくるが,数値実験の結果,乗数の最下位ビット(LSB)を1に設定すれば相当に改善されることが分ってきた。 SSIハッシュ関数の安全性については,その基礎となるSSRアルゴリズムに基づくハッシュ関数の安全性が,高次の代数方程式の解を求める問題に帰着されることが分ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
ハッシュ関数を構成するパラメータ(乗算の回数,シフトのサイズなど)については,大体の方向性が得られたので,今後,安全性を保ったままハッシュ値生成アルゴリズムをどこまでスリム化できるかの解析を行っていく予定である。アルゴリズムの単純化は,ハッシュ値の生成速度を速めるとともに,ハッシュ関数の安全性に関する解析の進捗に寄与するものと考えている。 SSIハッシュ関数のアルゴリズムは,[1,2)上のベータ変換の繰り返しとして具体的に数式化される。この数式表現を用いて,ベータ変換の繰り返しを分りやすい形で数式化することにより,SSRハッシュ関数の安全性に関する考察をさらに精密化して,SSIハッシュ関数の安全性を解析していく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,ハッシュ関数のアルゴリズム解析において,パラメータ値を変化させた場合の乱数特性の変化を調べる数値実験を,複数台のワークステーション(WS)による並列計算により繰り返し行っている。現在,並列計算を管理するWSとして旧規格のものを使っているので,これを最新規格のWSに更新するための予算として,本年度からの繰越研究費(6万円)と合わせて20万円程度を予定している。また,今年度の ASIACRYPT 2011(韓国・ソウル)への調査・研究出張はこれまでの研究成果の発表を行えたこともあって,特に有効であった。ASIACRYPT 2012は,中国・北京で行われるのでこの調査・研究旅費として16万円程度を予定している。さらに,調査・研究,研究打合せ国内旅費として10万円を予定している。そのほか,情報科学,確率論関係の書籍購入費として12万円,ソフトウェア購入費として5万円,謝金として3万円を予定している。
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Research Products
(2 results)