2011 Fiscal Year Research-status Report
注意の片寄りによって生じる知覚抑制が「ヒヤリハット」の要因となる個人特性の解明
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23500332
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
浅田 博 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50151030)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヒヤリハット / Fmシータ脳波 / 注意の過集中 |
Research Abstract |
本研究の実施に当たり、大阪府立大学高等教育推進機構研究倫理委員会における倫理審査申請手続きを行い、承認を得た。 23年度は、まず、日常的な「ヒヤリハット」経験と注意集中、Fmθ脳波出現頻度との共分散分析を行うための検査用紙の作成を行った。「ヒヤリハット」の日常生活での実際の経験頻度項目とともに、何かに注意し過ぎる傾向はないかということに関連した性格検査項目を設定し、数値化するために(0)から(3)までの4段階で自己評価をしてもらう20問から成る「ヒヤリハット」検査用紙を作成した。 また、脳波と知覚抑制の関係を新たに研究するための視覚刺激装置の開発を行った。被験者の正面に設置した運転ゲーム用のモニター画面の背後に、周辺視野刺激のための大画面モニターを設置し、周辺視野のランダムな位置と時間で文字を提示するプログラムの試作を行った。新たに学生被験者を募集し、10名について運転ゲーム中における試作プログラムによる周辺視野刺激の認知実験を行った。同時に「ヒヤリハット」検査用紙に回答してもらった結果とゲーム中の脳波についての対応の検討を現在行っている。 一方、過去に測定した脳波記録のFmθ判定において、その周波数、出現頻度、Fmθ律動持続時間等について再検討するための統一した基準作りを行った。そこで、過去にゲーム中の脳波を計測した50名の被験者の脳波記録を対象にFmθ律動の出現について再検討したところ、1秒以上持続するθ律動波がゲーム中頻繁に出現した者4名、θ律動波の持続1秒以下3波以上のθ律動が出現した者21名、3波以上持続する律動波ではなくθ成分としてのパワー値が見られた者15名、全くθ成分波の見られなかった者10名であった。 この分類に従って今後、本検査用紙を送付して「ヒヤリハット」のアンケート調査し、Fmθ律動との関連を検討していく足掛かりができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ヒヤリハット」と注意に関する性格検査に関する検査用紙の試作はできている。また、脳波と知覚抑制の関係を新たに研究するための視覚刺激装置とプログラムの開発を行った。それを用いて脳波測定実験を新たに行った被験者に対して実施した「ヒヤリハット」検査においても、何かに没頭しやすい性格と日常生活における「ヒヤリハット」経験がある程度対応している結果が見られている。 今後、過去の脳波測定者に対して本検査用紙を送付してアンケート調査していく足掛かりができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査で協力の同意の得られた実験協力者を対象に、Fmθ出現群における「ヒヤリハット」経験頻度の高い被験者と頻度の低い被験者を10名ずつ、Fmθ非出現群における「ヒヤリハット」経験頻度の高い被験者と頻度の低い被験者を10名ずつ、の計40名の被験者を選別し、Fmθ出現量の多いものから順に再度実験協力を依頼する。もし協力の同意の得られない場合は、順次 Fmθ出現量の下位の者に依頼をしていくこととする。 上記方法で実験協力に賛同の得られた被験者群を対象に、23年度に行なった周辺視野刺激装置を用いた知覚抑制検出実験を行う。 計測した多チャンネル脳波計測とゲーム画面の同時記録の解析を中心的に行う。非認知時および、Fmθ出現と非出現時における各データをそれぞれ抽出比較し、Fmθ出現時における文字の知覚抑制と対応した誘発電位の抽出を行う。Fmθ出現者に対し、作業遂行時の知覚抑制がFmθ出現者の個体差による特性であるのか、さらにはFmθ出現者であっても、Fmθ律動が出現しているときだけに対応した視覚抑制であるのか、あるいはFmθが出現する前後とも対応した特性であるのかを共分散分析などを用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に計画していてできなかった過去の被験者群に対するアンケート調査を24年度に実施する。その結果生じる、調査費、被験者に対する交通費を含む実験協力謝金等に使用する予定である。 また、本年度試作した装置の改良を行い、注意集中しすぎて知覚抑制の生じやすいヒトと注意分散しやすいヒトをあらかじめ判定するとともに、過度の注意集中による注意散漫の生じやすい人に対して、設定値以上のFmθ出現を検知し、過集中の状況にあることをフードバック警告する装置を試作する。
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