2012 Fiscal Year Research-status Report
シナプスの発達・維持におけるTollファミリータンパク質の機能
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23500405
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
鈴木 えみ子 国立遺伝学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20173891)
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Keywords | シナプス / ショウジョウバエ / Toll / 神経-筋接合 |
Research Abstract |
シナプスの形成や維持及び可塑的変化の過程で、様々な細胞膜タンパク質が重要な役割を担っている。我々はこの過程に関わる可能性の高い新規の細胞膜タンパク質の探索と機能解析を、モデル生物であるショウジョウバエの神経-筋接合シナプスを用いて遂行している。これまでに複数の候補タンパク質を筋肉での過剰発現によるシナプス形態異常の誘発を指標に同定したが、この中に細胞膜タンパク質にToll-7が含まれていた。Toll-7はパターン認識タンパク質群であるToll Interleukin-1 Receptor (TIR) proteinsの一員であるが、その機能は未だ不明である。また、哺乳類でもTIRの多くが神経系で発現しているが、その機能についての解析は乏しい。そこで、本研究ではToll-7を含みショウジョウバエに9種類あるToll family proteinがシナプス形成・維持・可塑的変化に関与する可能性を検証し、その分子メカニズムを解明することを目的とした。我々は昨年度までに、Toll-7の過剰発現ではシナプスの減少が認められ、Toll-7の機能欠失突然変異ではシナプスにおけるグルタミン酸受容体のクラスターが増大する事を見いだした。そこで、本年度はTollファミリーメンバー各々について筋肉と神経においてRNAiによるノックダウンを行ない、グルタミン酸受容体やPSDマーカーであるDlgタンパク質の局在を調べる事により、これらのタンパク質の機能を解析した。また、Tollタンパク質と相互作用すると考えられている、Spzファミリータンパク質についてもRNAi実験を行なった。その結果、どのタンパク質についても、単独ではノックダウンの効果は認められなかった。このことから、複数のTollファミリーメンバーが協調して機能する可能性を検証する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.機能欠失突然変異の表現型が筋肉で認められた、Toll-7の発現を調べるため特異的RNAプローブを作製し、筋肉におけるmRNAの検出を試みたが、結果は陰性であった。このことから、他のTollファミリーメンバーについても検出が困難である事が予想されたので、当初予定していたTollファミリーメンバーのmRNA発現検出実験は行なわなかった。 2.当初の予定通り、Toll-7以外のTollファミリーメンバー遺伝子(Toll-1, 5, 6, 7, 8)のノックダウンを筋肉でのRNAiによって行なった。これまでのところ表現型は認められていない。当初予想したように、複数の遺伝子を同時にノックダウンする必要が有ると考えられ、この点が問題として残っている。また、Toll-2, 3, 4については検証が終わっていない。 3.当初の予定通り、Tollタンパク質と相互作用する事が考えられているSpatzleファミリーについて、Spz-1から5まですべての遺伝子を個別にRNAiでノックダウンし、グルタミン酸受容体やPSDの局在を調べた。これらについても単独の遺伝子ノックダウンでは表現型を認めることはなかった。従って、Spzについても複数の遺伝子ノックダウンによる機能を検証することが今後の課題として残された。 4.Tollシグナル経路の機能解析については系統を取り寄せ、解析の準備を行なったが、詳細な解析は開始していない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今年度の課題として残った、Tollファミリーメンバーの遺伝子を複数組み合わせてノックダウンする事を試みる。一部は機能欠失突然変異と組み合わせた変異体も作成し、その表現型を詳細に解析する。Spzについても複数の遺伝子ノックダウンや機能欠失突然変異の解析を進める。 2.Toll-7については機能欠失突然変異で誘導されたグルタミン酸受容体のクラスター増強がどのような細胞・分子メカニズムで誘導されるのか、詳細に調べる。グルタミン酸受容体サブユニットの転写、翻訳のレベルがToll-7によって制御されているのか、また、細胞内輸送、膜移行、細胞内取り込みと分解、といった細胞内ロジスティックの過程においてToll-7のシグナルがどのように関与しているのか、細胞生物学的な解析を行なう。 3.これまでに知られているTollシグナルカスケードの因子について、系統の準備が整ったので、組織特異的遺伝子ノックダウンを行ない、表現型を解析する。 4.グルタミン酸受容体の後シナプスにおける発現制御について、他の制御因子との相互作用を解析する。我々はこれまでにFGFシグナルが神経-筋接合のグルタミン酸受容体の発現制御に関与する事を見いだした。そこで、特にFGFシグナルとTollシグナルとがどのような関係性をもってグルタミン酸受容体の発現制御に関わるのか、遺伝学的相互作用を解析する事により、明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.複数の遺伝子を同時にノックダウンした系統を出来るだけ多く作製するため、実験動物の飼育用品及び飼育用餌材料の購入に約30%を使用する。 2.神経-筋接合部の細胞生物学的解析のための抗体プローブ類の購入に約30%を使用する。 3.新たに使用する系統の購入に約20%を使用する。 4.成果の発表と情報収集のための学会発表旅費及び論文投稿料に約20%を使用する。
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[Journal Article] Developmental changes in expression, subcellular distribution, and function of Drosophila N-cadherin, guided by a cell-intrinsic program during neuronal differentiation.2012
Author(s)
Kurusu, M.,Katsuki, T., Zinn, K., Suzuki, E.
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Journal Title
Developmental Biology
Volume: 366
Pages: 204~217
DOI
Peer Reviewed
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