2012 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質形成の基盤となるニューロン動態制御機構のライブ観察に基づく解明
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23500410
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榊原 明 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20510217)
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Keywords | ニューロン / 大脳皮質 / 細胞移動 / 樹状突起 / 軸索 |
Research Abstract |
本研究は三次元的に進行する脳形成におけるニューロンの移動、樹状突起形成、神経軸索形成といった形態形成活動をライブで捉え、その根幹となる分子メカニズムを細胞生物学的見地から解明することを目指している。今年度はマウス胚大脳原基スライス培養下でニューロン移動・極性化の過程における中心体の細胞内動態を明らかにし、Cerebral Cortex誌に原著論文として発表した。この論文では、興奮性大脳皮質ニューロンが多極型移動ステージで脳表面に対して接線方向に軸索を形成する際には中心体が軸索形成部位に局在すること、皮質板に進入したのち双極型の形態をとるニューロンにおいて細胞後方から軸索が形成される際には、中心体は軸索側に局在しないことを明らかにした。この結果は軸索が中心体近傍から形成されるという従来のモデルとは合致しないことから、これらの観察結果を説明するため、ニューロンの神経突起が複数存在する場合、中心体は伸長活性の最も高い突起(優性突起)に引き寄せられ、中心体の軸索近傍への局在は軸索が優性突起であるか否かによって決まるという新たなモデルを提唱した。 一方で、ニューロン移動後期段階の細胞形態制御機構にアプローチするための発現時期遅延型遺伝子発現実験系構築を進めた。この際、昨年度から試みてきたタモキシフェン誘導型CRE-ERT2を利用して発現時期を遅延させるアプローチは薬剤の効き方が一様でなく再現性の面で問題があることが判明し、現在、ニューロン特異的な転写プロモーターとしてアルファチューブリン(Ta)プロモーターに代わりNeuroDプロモーターを利用する遺伝子発現系構築を進めている。今後、NeuroD-Creを利用してガンマチューブリン-コンディショナルノックアウトマウスの表現型解析にとりかかるとともに、ニューロン形態制御因子の過剰発現ならびに変異型分子を導入した細胞の表現型解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大脳皮質ニューロン移動の正常発生における細胞形態変化と細胞質微小管動態変化の相関を蛍光ライブ観察により解析した結果をCerebral Cortex誌に原著論文として発表した。この論文で記載した内容は以後の機能阻害実験における表現型解析に必須の情報であり、本研究計画を進める上で大きな一歩を踏み出すことが出来た。 当初の計画にあった、分子レベルでの細胞形態制御因子に関する機能解析は計画を変更して次年度に行うこととし、遅延型遺伝子発現システムの確立を優先した。また、研究計画書に記載したタモキシフェン誘導型CRE-ERT2を利用して発現時期を遅延させるアプローチは薬剤の効き方が一様でなく再現性の面で問題があることが判明したため、年度途中からNeuroDプロモーターを利用する遅延型遺伝子発現系の構築に切り替えた。これまでにNeuroDプロモーターの発現開始時期がTaプロモーターと比較して明瞭に遅いという感触を持っており、現在、両者の発現開始時期の差を定量的に解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Ta-Creと比較して興奮性大脳皮質ニューロンにおける発現開始時期が有意に遅いNeuroD-Creを利用した遅延型コンディショナルノックアウトの手法を用いて、ガンマチューブリン枯渇ニューロンの表現型解析を行う。この際、ニューロンが皮質板まで移動を達成した後の形態形成に及ぼす影響に注目して解析を進める。 (2)ニューロン特異的NeuroDプロモーターを利用した遅延型遺伝子発現系を使って、細胞形態・細胞骨格制御因子に関する機能解析を分子レベルで行う。 (3) CRE依存的にshRNAを発現するコンディショナルノックダウンベクターを利用した遅延型ノックダウンシステムを確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子導入実験とスライス培養に必要な消耗品類の購入費用、実験補助のための技術補佐員への謝金、学会発表のための参加費・旅費、論文発表のための諸経費、英文校正のための謝金として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)