2011 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質形成の神経細胞移動と配置におけるERK1/2の役割
Project/Area Number |
23500421
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
今村 宰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (40534954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧嶋 邦夫 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (50531365)
伊達木 穣 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 助教 (00415879)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経細胞移動 / 大脳皮質形成 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
Extracellular signal-regulated kinase 1/2 (Erk1/2)は中枢神経細胞の増殖・分化および記憶・学習などの高次機能に関与するシグナル伝達分子である。我々はErk1ノックアウトマウスと中枢神経特異的Erk2ノックアウトマウス(Erk2 flox/flox;Nestin-Cre)を掛け合わせることにより作製したErk1/2ダブルノックアウトマウス(Nestin-DKO)において、大脳皮質の層構造形成異常、神経細胞の大脳皮質表層(第2/3層)への移動障害および放射状グリアの突起構造異常を見出した。発生期大脳皮質の脳室帯で誕生した神経細胞は、放射状グリアの突起構造を足場として放射移動するが、Nestin-DKOでは放射状グリアの突起構造が胎生後期から崩壊してしまうため、Erk1/2の機能欠損による細胞移動障害の影響が神経細胞自身によるものなのか(細胞自律的)あるいは放射状グリアの足場構造によるものなのか不明である。そこで、Erk1/2が細胞自律的に放射方向への神経細胞移動を制御しているか検討した。胎生期Erk1(-/-)Erk2(flox/flox)マウスの脳室帯に子宮内電気穿孔法でCreリコンビナーゼとGFP発現プラスミドを導入し、標識された移動神経細胞の大脳皮質での分布を経時的に観察した結果、Erk1/2ノックダウン神経細胞の放射移動に顕著な変化は見られなかった。一方、子宮内電気穿孔法により遺伝子導入を行った大脳皮質スライス標本を数日間培養したところ、Erk1/2ノックダウン神経細胞では皮質板の表層領域に移動した細胞数に減少傾向が認められた。現在、大脳皮質スライス培養下でのタイムラプスイメージングにより放射移動している神経細胞の詳細な動態観察を行うとともに、放射状グリアの突起構造維持におけるErk1/2の機能解明も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
子宮内電気穿孔法を用いたErk1/2ノックダウン神経細胞移動の解析に関しては当初の計画を達成しているものの、研究実績概要で示した通り、Erk1/2の神経細胞移動における機能が細胞自律的なのか細胞非自律的なのか明確な結論に至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞にのみCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスとErk2(flox/flox)マウスあるいはErk1(-/-)Erk2(flox/flox)マウスを交配させ、神経細胞特異的にErk2あるいはErk1/2をノックアウトしたマウスを作製し、その大脳皮質発生過程の表現型を解析することにより、細胞移動におけるErk1/2の細胞自律的な機能解明を目指す。一方、Erk1/2の機能欠損による神経細胞移動の障害が細胞非自律的な影響による可能性も考えられるため、Nestin-DKOに見られる放射状グリアの突起構造異常の原因究明も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、本学の実験動物飼育費として70万円を計上していたが、科研費での支払いができなかったため、繰越となってしまった。繰越金は、既にトランスジェニックマウスの購入にあてている。本年度は、消耗品費として、実験試薬に30万円、チューブ・実験器具類に30万円、PCR関連試薬に10万円、細胞培養関連に40万円が必要である。
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