2011 Fiscal Year Research-status Report
IDH1変異体を有するグリオーマの細胞多様性と治療応答性・抵抗性分画の同定
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23500429
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 諭 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90294917)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | glioma / astrocytoma / oligodendroglioma / IDH1 / immunohistochemistry |
Research Abstract |
グレードIIからIVのアストロサイトーマ系およびオリゴデンドログリオーマ系腫瘍の生検標本のホルマリン固定パラフィン切片においてIDH1R132Hに対する免疫染色を行った。症例の内訳は、diffuse astrocytoma (WHO grade II)2例、oligodendroglioma (WHO grade II)6例、anaplastic astrocytoma (WHO grade III)2例、glioblastoma (WHO grade IV)11例、glioblastoma with oligodendroglioma component (WHO grade IV)2例であった。このうち、IDH1R132Hに陽性となった症例はdiffuse astrocytoma 0例(0%)、oligodendroglioma 6例 (100%)、anaplastic astrocytoma 0例(0%)、glioblastoma (WHO grade IV)1例(9%)、glioblastoma with oligodendroglioma component (WHO grade IV)1例(50%)であった。MAP-2eに対する免疫染色では全症例が陽性となり、ほぼ腫瘍細胞特異的な染色が得られた。IDH1R132H陽性症例において、MAP-2eに対する免疫染色と比較したところ、陽性細胞は概ね一致する傾向にあったが、一部MAP-2e陽性でありながらIDH1R132H陰性の細胞が存在することが明らかになった。MAP-2eは広くグリオーマ細胞に発現する蛋白であるため、同一腫瘍組織内において遺伝子背景の異なる腫瘍細胞あるいは腫瘍細胞様の振る舞いを示す反応性コンポーネントが存在する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
症例の選択および標本の収集が完了し、免疫染色の条件決定を終えた。また、初回の免疫染色によるスクリーニングを完了し、次年度以降の定量的解析および分子生物学的解析のための準備が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
光顕レベルで形態上ならびにマーカー発現上の区別がつかないIDH1R132H陽性細胞と陰性細胞の遺伝子背景の異同を検討するために、選択したパラフィン切片よりマイクロダイセクション法を用いて症例ごとに陽性細胞、陰性細胞に分けて回収し、プールする。それぞれのプールからDNAを抽出し、全ゲノム増幅法(Qiagen社WGA kitによる)によりDNAを均等に増幅し、以下の実験のサンプルとする。1.IDH1コドン132点変異の解析:PCRと制限酵素を用いたPCR-RFLP法(Meyer 2010, Brain Pathol)により、免疫染色でIDH1R132H陽性あるいは陰性となる細胞のR132H変異の有無をスクリーニングする。さらにPCRで増幅されたDNA断片のシークエンシングにより、結果を確認する。2.アレイCGHによる染色体の解析:さらに免疫染色でIDH1R132H陽性あるいは陰性となる細胞の遺伝子背景をゲノムワイドに比較するため、それぞれの分画から得られたDNAの状態を、アレイCGHによって比較検討する。当院のグリオーマサンプルはルーチンで染色体1番、10番、17番、19番のLOHが解析されているため、IDH1R132H陽性分画、陰性分画のCGHの結果と比較し、対応した結果が得られるかを検討する。以上の方法により、ヒトグリオーマ組織における腫瘍性および非腫瘍性分画の存在パターンにつき形態学的な基礎的知見を得、抗IDH1R132H抗体出現以降のグリオーマの病理診断における各種組織化学的マーカー使用のあり方について一定の指針を提示する。さらに分子病理学的所見に基づき、真の治療ターゲットとなる腫瘍幹細胞を組織切片上に同定する試みの端緒とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、すべて抗体類、分子生物学的解析に必要な試薬類、ディスポプラスチック器具などの消耗品に当てる予定である。
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