2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500466
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
少作 隆子 金沢大学, 保健学系, 教授 (60179025)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | カンナビノイド / 可塑性 |
Research Abstract |
本年度は、カンナビノイド受容体アゴニストの長期投与により神経活動がどのような影響を受けるのかを調べた。神経活動は長期的にみるとほぼ一定となるように調節・維持されている。カンナビノイドはシナプス伝達を抑制するため一時的には神経活動を抑制するが、活動を一定にさせる仕組みにより興奮性が上昇する可能性が考えられる。そこで、まずこの可能性について検討した。また、それと平行して、カンナビノイド依存性の課題の開発を試みた。 神経活動を抑制する薬剤であるテトロドキシンを培養海馬ニューロンに1-2日間投与すると、薬剤除去後にニューロンの興奮性が著しく上昇していることが観察され、長期的変化を調べる本実験方法の妥当性が確認された。そこで次に、カンナビノイド受容体アゴニストWIN55,212-2を1-2日間投与し、興奮性の変化を調べたところ、予想通りに興奮性が上昇することが確かめられた。よって、カンナビノイド受容体の活性化は短期的には神経活動を低下させるが、長期的にはニューロンの興奮性を上昇させると考えられる。また、内在性カンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の効果を調べたところ、2-AGにはカンナビノイド受容体を介さない成分が含まれていることが示唆された。さらに、確率的行動選択課題について、再現性の高い値を得るための条件を確立した。 カンナビノイドは神経活動に依存して生成・放出され、それがさらに神経活動に影響をおよぼすという短期的なフィードバック・ループの存在はすでに報告されている。本研究はこのフィードバックがより長期的なスケールにおいても働いていることを示唆するものである。カンナビノイド系に作用する薬剤を治療薬として用いる場合には、このようなフィードバック機構を理解する必要があり、その意味において本研究は臨床的にも意義あるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、「カンナビノイドアゴニスト投与」や「神経活動の変化」がCB1受容体発現量にどのような影響をおよぼすのかを調べる予定であった。しかし、この両者がお互いに影響をおよぼし合うことがわかり、両者の関係をまず明らかにすることにした。この結果は、今後の研究計画にも影響をおよぼす重要なものであり、したがって、研究は進展していると言える。とは言え、予定通りではなかったため、この点においては「3.やや遅れている」と判断される。 一方、当初の計画にはなかったが、カンナビノイド依存性の課題の開発を試みることにした。行動選択に深く関わる大脳基底核にはカンナビノイド受容体が高濃度に存在している。また、ストレスはカンナビノイド系を変化させるとともに、行動選択にも影響をおよぼすことが報告されている。以上より、「ストレスによる行動選択の変化はカンナビノイド系の変化を介している」のではないかと考え、それを調べる実験を開始した。本年度はまず行動選択課題の条件の検討を行い、信頼性、再現性の高いデータを得るためにはどのような方法を用いたら良いのかを明らかにした。したがって、この点においては「1.当初の計画以上に進展している」と判断される。 以上2点より、総合評価として「2.おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、培養海馬ニューロンの種々培養条件下でのCB1受容体発現量を測定し、どのような因子が発現量に影響をおよぼすのかを明らかにする。また、行動選択課題については、種々疾患の患者や健常者へのストレス負荷前後での課題成績への影響を調べ、行動選択課題に影響をおよぼす因子を探索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CB1受容体発現量の測定の実験においては、培養細胞の作成・維持に費用がかかるのみならず、生化学的・分子生物学的実験に必要な高額な消耗品を購入する必要がある。また、本年度使用した行動選択課題のプログラムソフトウェアに関し、いくつか改良の必要が生じたため、プログラムソフトウェアの改良費も必要となる。
|
Research Products
(1 results)