2011 Fiscal Year Research-status Report
骨梁構造の力学的異方性を考慮した骨体の患者別小規模モデルの構築
Project/Area Number |
23500514
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小関 道彦 信州大学, 繊維学部, 准教授 (50334503)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 個体別モデリング / X線CT / 異方性材料 |
Research Abstract |
生体骨の力学状態を患者別に解析した結果は、筋骨格系疾患の診断や治療に非常に有用である。しかし、医師が利用する一般的なパーソナルコンピュータで扱える小規模モデルでは、骨体を等方性材料としてモデル化されることが多く、より正確に生体硬組織を解析するためにはその材料特性を異方性材料として設定することが求められている。そこで本研究では、以下の二つの研究目的を設定している。 第一の研究目的:海面骨の骨梁構造に起因する骨体の力学的異方性の情報を、三次元医用画像から抽出するアルゴリズムを構築すること。 第二の研究目的:力学的異方性を考慮した小規模患者別モデリングを実施し、等方性材料を設定した従来モデルよりも信頼性の高い応力解析を実施すること。 平成23年度は、主に第一の研究目的を達成することを目指して研究を遂行し、緻密骨の構造異方性の可視化および数値化を実現した。まず、鶏橈骨のマイクロフォーカスX線CT画像から微小管構造の情報を抽出する方法を考案し、その適用結果から骨の構造異方性をCT画像で観察可能であることを確認した。そして、CT画像群によって構成される三次元空間に対して局所領域を調査し、骨領域の連続量をもとに各方向の構造異方性を数値化する方法を提案した。また、数値ファントムおよび鶏橈骨のCT画像に対して個体別モデリングを試み、CT画像から抽出される異方性情報をモデルに設定することによって応力解析結果に差異が生じることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記に示すように、研究はおおむね順調に進展している。 初めに、緻密骨の構造異方性を確認するためにX線CT画像から構造異方性を抽出し、可視化する方法を考案した。鶏橈骨のCT画像には多数の黒点が観察され、これは緻密骨に存在する微小管構造であると考えられた。そこで、CT画像の積層によって得られる三次元空間に対して連続性を抽出するプログラムを作成し適用したところ、緻密骨の微小管構造と定性的に一致する構造異方性の可視化を実現した。 実験に使用するX線CT装置により骨の異方性情報を抽出可能であることを確認できたため、次に、構造異方性の数値化アルゴリズムについて検討した。このアルゴリズムでは、微小領域を三次元的に観察し、各方向にどれだけ骨領域が連続して存在しているかを判別する。そして、各方向の連続量に応じて算出される各方向の異方性度をパラメータ化する。コンピュータ上で作成したCT画像に対して数値化アルゴリズムを適用し、評価した。 また、当初計画よりも先行して、数値ファントム及び鶏橈骨を対象として個体別モデリングおよび有限要素解析を試みた。本来、三次元的な異方性材料の力学状態について検討するためには、三方向の縦弾性係数・横弾性係数・ポアソン比の9つのパラメータを同時に考慮する必要があるが、検討の第一段階として、構造異方性はヤング率だけに影響すると仮定し、方向比を元のヤング率に乗ずることで異方性モデルのヤング率を決定した。解析結果より、異方性を考慮することにより応力分布に差異が生じることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究において、個体別モデルに異方性情報を設定することによって解析結果に影響があることが明らかになったが、提案する方法によって数値化された異方性情報を異方性材料の物性値として扱ってよいか検証が不十分である。そこで平成24年度は、材料試験を実施して異方性抽出アルゴリズムの性能検証を行うとともに、構造異方性と力学的異方性の関係を正確に把握し、患者別モデルに設定する材料パラメータを同定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、試験片材料購入のための消耗品費や人件費を計上していたが、平成23年度は研究の初期段階として現有する材料だけを用いて申請者単独で研究を推進することができたため次年度使用額が生じた。 平成24年度に実施する予定の異方性材料の物性値設定手法の性能向上および解析結果の妥当性検証は、内部構造を含めた変形挙動の比較により実施することを計画している。そこで平成24年度には、ロードセルおよびレーザ変位センサを購入し、すでに製作を開始しているCT装置内圧縮荷重試験装置内に設置することにより、圧縮荷重試験機として十分な変位分解能・荷重分解能を実現する予定である。また、異方性材料を模擬した試験片を多数作成し、CT観察下での実験を実施したい。
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Research Products
(1 results)