2011 Fiscal Year Research-status Report
培養心筋細胞機能発現に及ぼす培地内必須脂肪酸の重要性に関する革新的研究
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23500539
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中村 孝夫 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00142654)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋細胞 / 培養 / 必須脂肪酸 / ラット |
Research Abstract |
培養系における心筋細胞機能の劣化に及ぼす脂質、特に必須脂肪酸の供給不足の影響について検討するため、培養心筋細胞と自然な誕生過程における心筋細胞の脂肪酸組成を比較した。ラットを新生児群(誕生10日齢)、胎児群(胎生17日齢)及び培養群(胎生17日齢で採取後14日間細胞培養)の3群に分け、それぞれの心筋細胞をホモジナイズし、全脂質を抽出(Folch法)した後、ガスクロマトグラム法を用いて脂肪酸組成(24分画)を測定し、3群間の差を検討した。なお当初はリン脂質とtriglycerideを分離する予定であったが、試料重量が十分ではなかったため、全脂質を対象とした。その結果、まだ実験例数が十分とは言えないもののこれまでのデータでは、培養群細胞組織内の飽和及び一価不飽和各脂肪酸の含有量には、他の2群と比して顕著な差は観られていない。一方多価不飽和脂肪酸では当初の予想通り、培養群の特にω3系及びω6系の必須脂肪酸含有量が、新生児群と比較して著しく低下していることが明らかになりつつある。これらの結果は、心筋細胞機能発現に重要な役割を持つ必須脂肪酸が、培養系では著しく不足していることを示唆しており、このことは本研究の仮説、すなわち必須脂肪酸の供給不足が培養心筋細胞機能低下の要因の一つになる可能性を強く支持している。昨年11月にはそれまでの結果をまとめて、日本人工臓器学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる目標であった、新生児群(誕生10日齢)、胎児群(胎生17日齢)及び培養群(胎生17日齢で採取後14日間細胞培養)の3群間の脂肪酸含有量の比較検討は、当初の予定通りほぼ順調に進んで概ね終了に近づきつつあり、その結果も研究実績に記載のようにほぼ当初の予想通りとなりつつある。すなわち本研究はこれまでのところほとんど問題無く、当初の計画通り順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、今年度と同様の実験系で引き続きデータを蓄積して解析を進め、培地中に添加が必要な脂肪酸種についての最終結論を導き出す。この段階(第一段階)までに得られた成果を取りまとめ、研究発表を行う予定である。 次にその結果に基づき、不足していると考えられる脂肪酸を培地内に添加した培養系を構築し、それを用いて心筋細胞機能発現改善の検討(第二段階)へと進む。初年度に得られた結果からは、少なくともω6系とω3系必須脂肪酸の炭素鎖伸長反応の起点となるリノール酸及びリノレン酸の添加は必須であると考えており、その添加法の検討を既に開始している。これまでのところまず、培地に(i) dipyridamoleとアルブミンコーティング脂肪酸(各50~300 μM程度)を添加することによって、細胞内への脂肪酸取込みの亢進を試みる予定である。もしこの方法では難しい場合には、(ii) triglyceride+リポプロテインリパーゼ活性剤の添加、もしくは(iii) 市販の輸液用脂質製剤の利用なども考慮する。 脂肪酸取込みの亢進と消費などは、今年度と同様にガスクロマトグラム法によって、それぞれ培地内脂肪酸の減少量及び細胞組織内含有量で評価し、取込み亢進が確認できれば、既に開発済の方法で培養心筋細胞組織の力学的性質や拍動能の測定も開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度はほぼ予定通りに研究が進み、それとともに研究費もほぼ予定通りに使用した結果、僅かの額(\3,173)が次年度繰越となった。これらは次年度分の研究費と合わせて、次年度当初の消耗品購入費(心筋細胞染色用抗体\64,260)の一部として有効に用いていく予定である。 このことは次年度研究費の使途にほとんど影響を与えないため、次年度もほぼ当初の予定通りの研究費使用を考えている。
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Research Products
(1 results)