2015 Fiscal Year Research-status Report
外傷性脳損傷者の復職指導に関する研究-「職業の認知的要求尺度」作成の試み-
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23500596
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
石合 純夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80193241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 祐治 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (90585019) [Withdrawn]
青木 昌弘 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20515788)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 外傷性脳損傷 / 高次脳機能障害 / 就労 / アンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「仕事中の記憶など認知的負担に関するアンケート(以下、アンケート)」の既実施分についてデータの確認を行い、対象例の追加を行った。その結果、外傷性脳損傷等による高次脳機能障害患者15名分について分析可能となった。就労形態は、一般雇用10名、障害者雇用3名、就労継続支援A型事業所2名であった。神経心理学的検査は、対象者の症状に応じて実施されたWAIS-III、ウエクスラー記憶検査WMS-R、標準言語性対連語性学習検査S-PA、遂行機能障害症候群の行動評価BADS、Wisconsin Card Sorting Test、Trail Making Testの結果を分析し、認知的側面をワーキングメモリ、論理的記憶、近時記憶、注意・処理速度、遂行機能、知識・判断力、視空間・構成に分けて、成績を1~5の5段階(点数が高いほど良好)で評価した。社会的行動に関しては、発言・行動の制御について、外来と入院の診療録記載から判定した。アンケートは、神経心理学的検査の課題を職業場面での作業内容に置き換える形で作成され、発言・行動の制御に関する質問が加えられている。回答は、「ない/少ない、やや少ない、どちらともいえない、やや多い、多い」の5段階から選んでもらう形式となっている。アンケート結果は、認知的側面別に質問をグループ化し、回答の段階の平均値をその項目の認知的負担として算出した。認知的能力と認知的負担とを対照する方法として、8つの認知的側面をプロフィール化したグラフ表示を考案した。結果についての詳細な分析はこれからであるが、パタンとしては、認知的な能力と負担のプロフィール(グラフの形状)がマッチしている例は比較的少なく、一部の負担が過剰であるためにストレスを強く感じている例や、能力プロフィールの低い側面に引きずられて全体的に負担の少ない単純作業に限定されている例がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「仕事中の記憶など認知的負担に関するアンケート」の実施と回収は担当患者の就労状況に依存しており,当初の計画よりは少ない状況であるが,分析可能な量が集まっている.神経心理学的検査とアンケート結果との対比方法についても骨格は固まっている.最終的な分析と報告書の作成について,平成27年度は医学教育者として医学部第四学年の学年担任としての業務等が多忙であったため,遅れが生じてしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
「仕事中の記憶など認知的負担に関するアンケート」の追加実施は、外来通院患者の就労が必ずしも順調に進んでいるとは言えないために、多くは期待できない。一方で、神経心理学的検査結果と発言・言動の制御に関する記録から評価した認知的能力とアンケート結果から得られる認知的負担については、相対的な5段階を基準とした数値化により分析を進める。また、認知的能力と認知的負担のプロフィールを対比し、個々の対象ごとの問題点を明らかにする。なお、対象者はプロフィールがマッチしていない例が少なくないとはいえ、就労を継続できているので、認知的能力の良好な側面で代償が可能となっている可能性についても分析する。本年度は、1年間延長した最終年度となるので、神経心理学的検査に基づく認知的能力の評価とアンケート結果からの認知的負担の分析方法に関するマニュアルを作成し、研究成果を利用してもらうための公表準備を進める。
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Causes of Carryover |
研究データの収集は概ね終了し,分析を進めて報告書をまとめている段階であるが,様々な学内外の用務のため, 予定していた研究および調査のための出張や報告書作成が都合により困難となったため,残額が発生したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間延長の承認を受け,研究データの分析および報告書作成をより計画的に実施する。
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