2011 Fiscal Year Research-status Report
運動器不活動に伴う慢性痛発症予防に向けた運動処方開発のための基盤研究
Project/Area Number |
23500628
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
大道 美香 愛知医科大学, 医学部, 助教 (30581079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大道 裕介 愛知医科大学, 医学部, 助教 (50506673)
大迫 洋治 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40335922)
大石 仁 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (00252461)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 運動療法 / 予防 / 自発運動 / 運動療法 / 神経科学 |
Research Abstract |
慢性痛の代表として複雑局所性疼痛症候群Iがある。この患者の半数近くは、発症起点としてギプス固定やスプリントによる患肢の廃用を経験しており,運動器の不活動に慢性痛の大きな誘因が含まれることが予想される。近年、慢性痛の病態解明により中枢神経系の可塑的変容が明らかとなってきているが、有効性の高い治療法の開発までには至っていない。本研究では慢性痛の有効的な治療法の開発を目的に、予防的見地から運動療法の効果について基礎的検証を行った。慢性痛モデル動物として、我々が運動器の不活動に伴う慢性痛のメカニズム解明のために開発したギプス固定後慢性痛モデルを使用する。予防的運動が慢性痛にもたらす影響を検証するために、このモデル動物作成前に2週間ランニングホイールを用いて自発運動を行わせた。自発運動後2週間のギプス固定を行い、ギプス除去後の痛み行動の測定を足底部・下腿部および尾部の機械的痛覚過敏行動をvon Frey testにて、また筋圧痛閾値にはpush-pull gaugeを用いて計測を行った。結果、下肢不動化慢性痛モデル群と運動+モデル処置群を比較すると、機械的痛覚過敏行動は固定側で足底・下腿において若干の減弱傾向を示し、非固定側で優位に減弱を示した。また尾部および筋圧痛閾値においても両側性に優位に減弱を示した。さらに、運動+モデル処置群間においてもランニングホイールの走行距離が伸びない群では機械的痛覚過敏行動の優位な減弱は示さなかった。以上の結果から予防的運動が機械的痛覚過敏行動の亢進および筋圧痛閾値の低下を抑制し、さらに非固定側への拡大を抑制する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で予定している初年度の計画はほぼ実行できている。現在、モデル処置前に自発運動を実施後、慢性的機械的痛覚過敏行動に与える影響について行動学的解析を行い、予防運動効果による慢性的機械的痛覚過敏行動の減弱傾向が確認れてきた。慢性的機械的痛覚過敏行動に対する予防的運動効果について、運動+モデル処置群の例数を増やし、運動量の規定や期間など細部の検討を行う必要があり、より確実な予防運動効果を提示できるように現在取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで臨床的に運動習慣のある人は痛みが慢性化しにくく、慢性痛発症後も自発運動を生活で取り入れることで改善につながるケースがあるにもかかわらず基礎的検証が不十分であった。今回の研究で慢性的機械痛覚過敏行動に対する予防的運動処方の効果が確認されつつある。今後は運動量・期間などの条件を詳細に検討し、運動処方の指針を見つけ出し、さらにモデル処置前に運動を負荷し、慢性的機械的痛覚過敏行動が減弱した群に対して中枢神経系の可塑的変容の指標として脊髄グリアの活性化に着目して免疫組織学的解析を行う。また、研究の進捗状況に応じて、中枢および末梢の疼痛抑制関連因子の分子生物学的解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
慢性的機械的痛覚過敏行動と並行する脊髄グリア細胞活性化を指標とする免疫組織学的解析を中心に研究を行う。そのために必要な実験動物の購入、免疫組織学的解析に必要な抗体、試薬などの購入を中心に使用する。また、実験の進捗状況に応じて、中枢および末梢の疼痛抑制関連因子を解析するため、Western blottingなどの手法を用いて分子生物学的解析を行う。そのための抗体・試薬の購入も行う
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