2012 Fiscal Year Research-status Report
運動器不活動に伴う慢性痛発症予防に向けた運動処方開発のための基盤研究
Project/Area Number |
23500628
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
大道 美香 愛知医科大学, 医学部, 助教 (30581079)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大道 裕介 愛知医科大学, 医学部, 助教 (50506673)
大迫 洋治 高知大学, 医歯学系, 准教授 (40335922)
大石 仁 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (00252461)
|
Keywords | 慢性痛 / 予防 / 自発運動 / 運動療法 / 神経科学 |
Research Abstract |
慢性痛の有効的な治療法の開発を目的に、予防的見地から運動療法の効果について基礎的検証を行った。後肢不動化慢性痛モデル動物に対して、モデル動物作成前に2週間、ランニングホイールを用いて自発運動を行わせた。自発運動後に2週間のギプス固定を行い、ギプス除去後の機械痛覚増強を足底・下腿皮膚・尾部において測定を行った。結果、後肢不動化慢性痛モデル動物と運動+モデル処置群(運動群)を比較すると、運動群において非固定側の尾部への機械痛覚増強は優位に抑制していた。そのほかの部位においては若干の減弱にとどまり、優位な抑制にはつながらなかった。 本年度はこれらの動物群を用いて免疫組織学的検討を行った。慢性期の中枢神経系の可塑的変容の指標となる脊髄アストロサイトの活性化に着目して、両群において、機械痛覚増強の測定部位である足底の支配髄節である第4腰髄で検討を行うと、モデル動物群の慢性期に見られる脊髄アストロサイトの活性化が走行距離の伸びた群でわずかに減弱している組織像が確認された。その所見は足底や下腿の機械痛覚増強の変化と同様に、優位な減弱には至らなかった。しかし、今回の結果から運動量に応じて脊髄でのアストロサイト活性化像にわずかではあるが変化がみられたことや、非固定側の尾部への広範囲機械痛覚増強の拡大の抑制が確認されたことにより、運動が広範囲機械痛覚増強の維持・拡大の抑制に対して何らかの影響を与える可能性が示唆された。 以上により、予防的運動処方は機械的痛覚増強の広範囲への拡大抑制に対して主要な役割を担うことが予測される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で予定している計画はやや遅れている。 現在、モデル処置前に運動を実施後、慢性的広範囲機械痛覚増強に与える影響について行動学的解析を行い、予防運動における慢性的広範囲機械痛覚増強の非固定側の尾部への拡大に抑制傾向が確認された。これらの動物群を用いて、中枢神経系の可塑的変容への影響について免疫組織学的検討を行っている。後肢不動化慢性痛モデル動物において、慢性期に第4腰髄アストサイトの活性化所見が確認されている。この所見をもとにモデル動物群と運動群において比較検討を行った。その結果、第4腰髄アストロサイト活性化は運動群の中で運動量の多い群において、わずかにアストロサイトの突起伸長が抑制された所見が確認されているが、大きな活性化の減弱とまでは言えない。 しかし、運動が慢性的広範囲機械痛覚増強の尾部への拡大を抑制している結果から考察すると、行動学的所見に平行する尾髄のグリア細胞の検討をまだ十分に行うことができていない。その検討を行うことで広範囲機械痛覚増強の拡大に関する脊髄グリア細胞の関与の可能性をより検討することができると考えており、この研究を年度内に行うことができていない点でやや計画が遅れていると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで臨床的に運動習慣のある人は痛みが慢性化しにくく、慢性痛発症後も自発運動を生活で取り入れることで改善につながるケースがあるにもかかわらず基礎的検証が不十分であった。今回の研究で予防的運動が慢性的機械痛覚過敏行動の拡大に対して抑制傾向が確認されている。これらの群に対して、中枢神経系の可塑的変容の指標として脊髄グリアの活性化に着目して免疫組織学的解析を行ってきた。今までモデル動物において確認されてきた第4腰髄のアストロサイトの活性化は、運動処方によって優位な減弱傾向は確認されていない。 しかし、今回の結果から、運動処方は慢性的機械痛覚過敏行動の非固定側の尾部への拡大において減弱傾向を示している。この減弱傾向が見られる部位に相当する髄節における免疫組織学的検討をさらに行い、またこの慢性的機械痛覚過敏行動の拡大に関与する因子について生化学的手法を用いて分子生物学的解析を行う。これらの研究により慢性的機械痛覚過敏行動発現に関する物質の同定を行い、運動によりこれらの物質をどこまで抑制できるかを検討していき、予防的運動処方の基礎的検証を確立していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
慢性的広範囲機械痛覚増強と並行する脊髄グリア細胞活性化を指標とする免疫組織学的解析を尾髄などの拡大部位においてさらに解析を行い、Western blottingなどの手法を用いて、運動が誘発する疼痛抑制因子や慢性的広範囲機械痛覚増強の拡大に関連する因子について分子生物学的解析を行う。そのために必要な実験動物の購入、免疫組織学的・分子生物学的解析に必要な抗体などの試薬の購入を中心に使用する。
|
-
[Journal Article] Treadmill running and static stretching improve long-lasting hyperalgesia, joint limitation, and muscle atrophy induced by cast immobilization in rats2013
Author(s)
Morimoto A, Winaga H, Sakurai H, Ohmichi M, Yoshimoto T, Ohmichi Y, Matsui T, Ushida T, Okada T, Sato J
-
Journal Title
Neuroscience letters
Volume: 534
Pages: 295-300
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-