2011 Fiscal Year Research-status Report
活動を用いて認知症者のBPSDと介護者の心理的負担軽減を図る訪問プログラムの開発
Project/Area Number |
23500656
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西田 征治 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (90382382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 敏 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (70280203)
上城 憲司 西九州大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90454941)
西村 玲子 県立広島大学, 保健福祉学部, 助教 (10503104)
高木 雅之 県立広島大学, 保健福祉学部, 助教 (90468299)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 認知症 / 訪問プログラム / 意味ある活動 |
Research Abstract |
平成23年度の目標は,本訪問プログラム(活動を用いて認知症者のBPSD軽減および介護者の心理的負担軽減を図るためのプログラム)の適応となる対象者の要件および成果指標を明らかにすることであった.第1回会議でその方法を検討した結果,当初の案である調査研究ではなく,事例研究を第一に実施することが有効であると結論づけられた.そのため,本年度は三原地区で事例研究を実施した.加えて,1名の作業療法士を介入研究に同行させ,次年度以降神埼地区での介入実施者として育成した.事例への介入に先駆けて,プログラム実施マニュアル(案)を作成し,3事例に対して約8週間の訪問プログラムを実施した.その結果,2事例において成果が示され,1事例は中止となった.示された成果は,(1)介護者の心理的負担の軽減,(2)介護者の困りごとや懸念事項の改善,(3)介護者の介護に対する有能感の向上,(4)BPSDの軽減,(5)楽しみの活動(音楽鑑賞,アルバム閲覧など)との結びつきである.中止になった事例では,介護者は介護上の不平,不満や身体の不調を強く訴えるものの,当事者のよりよい生活を構築するために,介入者(作業療法士)と協働し,新たなことに取り組もうとする意志を示さなかった.これらの事例を通して,本プログラムの有効性が示されると同時に,適応となる対象者の要件や成果指標がいくつか明らかとなった.特に重要な対象者の要件は,「介護者が当事者(認知症者)のより良い生活を構築するために,介入者と一緒に取り組む意思を有していること」と考えられた.有用だった主な成果指標は,COPM(カナダ作業遂行測定),Zaritsの介護負担尺度,SCQ(The Sense of Competence Questionnaire),NPI(Neuropsychiatric Inventory),GAS(Goal Attainment Scaling)だった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は,在宅認知症者に対して,個人の特性に応じて仕立てられた活動を提供するとともに,介護者にその監督および支援技能を指導することで,行動心理症状(BPSD)の改善と介護者の心理的負担の軽減が図れるかを検証することである.23年度の目標は,本訪問プログラムの適応となる対象者の要件および成果指標を検討することだった.その目標は事例研究を通して,概ね達成することができた.しかし,事例数が少ないため,更なる介入研究と調査研究を実施する必要がある.調査研究は,23年度に実施する予定であったが,できなかった.その理由は,目的達成のためには,最初に調査研究よりも事例研究を実施することが有益であると判断されたからである.詳細な対象者の要件と成果指標を検討するための調査研究は24年度に繰り越すこととした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度前半は,本訪問プログラムの対象者の要件と成果指標の更なる検討を目的とした調査研究,プログラムの精緻化を行うための事例介入研究を実施する.当初,介入研究は10名を対象とした前後デザインで実施する予定だったが,3名を対象とした事例研究に変更する.その理由は,25年度に計画している比較対照実験が長期間かかることが予想され,前倒しする必要があるからである.24年度後半には,比較対照実験の実施に向けて,介入者(研究協力者)に対する講習会を開催する.また,三原市および神埼市の地域包括支援センターなどに協力を求めて対象者をリクルートし,比較対照実験を開始する.25年度には,24年度前半に実施する複数の事例研究,調査研究のまとめと執筆を行う.また,比較対照実験の継続と本プログラムの効果検証を行い,研究を総括する. また,年に2回,神埼地区と三原地区の協同研究者による会議を開催し,研究内容や推進方法について協議を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に実施する聞き取り調査研究では,三原市在住の10組の認知症者とその家族を対象とする.その協力者に対する謝金と調査のための交通費が必要である.調査研究の費用は概算で70,000円(内訳:謝金50,000円,交通費20,000円)である.介入研究では,介入者(研究協力者)として1名の作業療法士を雇う予定である.1事例に対して8回の訪問が行われるため,介入者に対して8回分の賃金と交通費を支払う必要がある.また,対象者(認知症の当事者と家族)に対して謝金を支払う必要がある.3事例に対して必要とされる経費は約270,000円(内訳:賃金および交通費240,000円,謝金30,000円)である.比較対照実験のための講習会開催は,本学三原キャンパスで実施する.介入を実施する参加者2名(三原地区および神埼地区の作業療法士各1名)の交通費は40,000円必要である.比較対照実験は三原市および神埼市で実施する.対象者のリクルートに協力してもらう地域包括支援センターに対して謝金を支払う.1事例の介入に掛かる費用は約90,000である.比較対照実験は,6名に実施するため540,000円の費用が必要である.県立広島大学および西九州大学で会議をそれぞれ1回開催するため,参加者の旅費が必要である.以上,平成24年度の必要経費概算は1,000,000円である.
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