2012 Fiscal Year Research-status Report
チームスポーツのための心理的コンディショニングに関する研究
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23500747
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
蓑内 豊 北星学園大学, 文学部, 教授 (50239331)
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Keywords | チームスポーツ / 心理的コンディショニング / IZOF / 情動 / パフォーマンス向上 |
Research Abstract |
本研究は、チームスポーツのパフォーマンスに大きく影響する心理的コンディショニングのあり方について検討し、チームパフォーマンスを高めようとするものである。具体的には、特に情動状態に注目し、チームの情動状態を手掛かりとして、心理的コンディショニングやパフォーマンスの安定・向上を目指している。 本年度は4年計画の2年目であり、平成24年度の研究成果として、雑誌論文2本、学会発表4回、シンポジウム1回、書籍1冊を発表した。以下に主要な3点の研究成果の内容を示す。 「IZOF理論における情動的感情の発現と制御」(日本スポーツ心理学会第39回大会 学会企画シンポジウム)では、司会および話題提供を行った。これは、情動状態とスポーツパフォーマンスの関係性などについて、これまでの研究結果を整理・公表するものであった。特に情動の先行要因を制御することで、情動状態の制御が可能であるという考え方に基づき、情動状態の制御方法を紹介した。日本スポーツ心理学会の多くの会員にも聴収していただき、研究成果を公開することにも貢献した。 「チームにおける情動状態の理解とチームパフォーマンスの関係」(メンタルトレーニング・ジャーナル第6巻)では、女子バスケットボールチームを対象としてチームの最適な情動状態を見つけ出し、その情動の先行要因について話し合いながらコントロールすることで、チームパフォーマンスの向上・安定させる可能性があることがわかった。このような過程を通して、チームパフォーマンスに影響する情動の発見や自己の行動・態度とチームパフォーマンスの関係性の理解が深まることが理解された。 「ラグビーの競技特性と心理的要因 ‐個人に求められる要因‐」(北星論集第50巻)では、ラグビーの指導者を対象として、ラグビーに求められる心理的要因を探り、動機づけや覚醒水準、理解力、責任感などの観点から考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成23年度~26年度の4年間で研究を行う計画である。1年目(平成23年度)は、研究の第一段階として、関連するデータの収集や尺度の整理であり、予備的・準備的調査を実施することができた。2年目~3年目(平成24年度~25年度)は、第二段階として、スポーツチームに対する心理的コンディショニングの調査、および、介入を行う計画であり、実際にラグビーやバスケットボールのチームに対する調査や介入を開始することができた。 バスケットボールでの調査では、チームにとってより良い情動状態を追求する過程を通して、チームパフォーマンスに影響している情動の発見や自己の行動・態度とチームパフォーマンスの関係性の理解が深まることがわかった。このような気づきの高まりによってコミュニケーションが促進され、チームの気持ちがまとまる方向へ進みチームパフォーマンスの向上・安定につながると考えられた。 ラグビーの調査では、競技に求められる心理的要因として、「忍耐力」「目標・動機づけ」「集中力」「責任感」「勇気・闘争心」「自己コントロール」「自信」「協調性」「状況判断」「理解力」「素直さ」の11項目が抽出された。これらの結果から、「動機づけ」「覚醒水準のコントロール」「勇気・闘争心」「自己コントロール」「理解力」「責任感」の要因がスポーツ心理学的に関連することが示唆された。 このように、バスケットボールとラグビーのチームを対象とした調査は予定通り開始しており、先行要因を通した情動状態のコントロールが心理的コンディショニングに役立ち、チームパフォーマンスの安定にも関係することが示唆されている。今後についても同じチームを対象として、調査を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度(4年計画の3年目)は、研究全体の中では第二段階であり、スポーツチームに対する心理的コンディショニングの介入を継続する。具体的には、前年度に引き続き、ラグビーやバスケットボールのチームに対するサポート活動を継続する予定である。また、個人競技であっても、一つのチーム(組織)としてまとまることが、個人のスポーツパフォーマンスの向上に寄与することが考えられる。そこで、チーム全体への働きかけが個々の選手の心理的コンディショニングやパフォーマンスに影響するプロセスについても検討したい。 ラグビーにおける心理的要因については、今後はよりチームや組織についての心理的要因に焦点を当てた調査を行うことを計画している。そのことによってチームとしての心理的コンディショニングやパフォーマンス向上につながると考えている。 さらに、ここまでの研究成果の中間報告、および、好評の場として、研究会の開催を計画している。2013年8月(予定)に北星学園大学において、スポーツ動機づけに関連する研究会を行い、情動を活用した心理的コンディショニングの方法を紹介したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度(4年計画の3年目)では、ラグビー部、および、バスケットボール部に対する心理的コンディショニングの介入調査の実施を引き続き予定している。また、行動分析の手法を取り入れた分析を積極的に行いたいと考えている。そのための映像関連機器、映像分析ソフトの購入を計画している。さらに、これらの調査の実施、および、研究成果の発表のための費用(学会参加費・交通費・宿泊費など)も予定している。 さらに、今年度は研究会の開催を計画しており、打ち合わせのための会議費・交通費の支出を計画している。
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