2012 Fiscal Year Research-status Report
ノルディックウォーキングが高分子アディポネクチンに与える影響:ランダム化比較試験
Project/Area Number |
23500839
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 和樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (00361080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 明彦 財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター, 予防推進部・循環器病予防部門, 副所長 (80450922)
梅澤 光政 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (00567498)
島本 英樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (50299575)
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Keywords | ノルディックウォーキング / 高分子量アディポネクチン / ランダム化比較試験 / 腹部内臓脂肪 / 肥満高齢者 |
Research Abstract |
本研究では、肥満高齢者に対するノルディックウォーキング(NW)プログラムの有効性を明らかにするため、通常ウォーキング(RW)を比較対照とするランダム比較試験を実施した。 本研究の適格基準を満たす高齢者29名(男性20名、女性9名、65.5±3.0歳)をNW群(15名)とRW群(14名)にランダムに割付け、両群に対して1回当たり2時間のグループ運動を週1回・計24回実施した。各運動プログラムの効果指標には、高分子量アディポネクチンやインスリン等の血液検査項目ならびにCTによる腹部脂肪面積を用いた。また、介入による生活習慣の変化がこれらの指標に与える影響を検討するため、介入前後で食事調査と日常生活における身体活動量調査を行った。 介入により体重は両群で有意に減少したが、減少量はNW群で有意に大きかった。皮下脂肪面積は両群で有意に減少したが、群間差は認められなかった。一方、内臓脂肪面積には有意な群間差が認められた(NW群:-27.1±7.2cm2, RW群:0.0±8.1cm2)。インスリン値は両群で有意に改善されたが、改善度はNW群で有意に大きかった(NW群:-3.5±0.8μU/mL, RW群:-1.5±0.3μU/mL)。しかし、高分子量アディポネクチン値に関しては、介入前後で両群に変化は認められなかった。 介入により両群のエネルギー摂取量に変化は認められなかった。一方、日常生活における身体活動量に関しては、両群で中高強度以上の活動時間が有意に増加したが、増加の程度はNW群で有意に大きかった(NW群:19.9±4.1min/day, RW群:7.5±4.4min/day)。 本研究により、肥満高齢者に対するNWプログラムの有効性が明らかになった。また、NWプログラムによる動脈硬化性疾患の危険因子の改善には、日常生活の身体活動強度の増大が寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載の通り、平成24年1月~6月の間、肥満高齢者に対するノルディックウォーキング(NW)と通常ウォーキング(RW)の効果を比較検証するためランダム比較試験を実施した。この結果、NWプログラムの体重、内臓脂肪面積、インスリン抵抗性など動脈硬化性疾患の危険因子に対する有効性が明らかになった。また、NW群における日常生活の身体活動強度の増大がこれらの危険因子の改善に寄与している可能性が示唆された。これらの研究成果については、日本ノルディックウォーク学会並びに日本疫学会で発表した。 しかし、現時点では、本研究の当初の目的である高分子量アディポネクチンに対するNWプログラムの有効性については確認できていない。この理由として、様々な要因が考えられるが、特に研究のパワー不足が関係していると考えられる。研究計画時には、先行研究の結果から本研究の対象者数は72名程度必要と計算したが、実際の参加者数は29名に留まった。このため、平成24年度の後半では、研究のサンプルサイズを増やすため、平成24年1月~6月と同じ内容の介入プログラムを実施した。 以下に、平成24年度の介入研究の実施状況を簡単に示す。大阪府泉佐野市保健センターの協力の下、平成24年8月に市報等により研究対象者の募集を行った。同年9月に研究説明会を開催し、研究への同意が得られた22名をNW群(10名)とRW群(12名)にランダムに割付けた。平成24年10月~平成25年3月の6か月間、両群に対して平成24年1月~6月期と同じ内容のグループ運動を24回実施し、介入前後で血液検査と腹部CT検査を実施した。現在、これらのデータについて解析を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、第1期(平成24年1月~6月:29名)と第2期(平成24年10月~平成25年3月:22名)の研究データを一つにまとめ、NWプログラムの腹部脂肪面積、インスリン、高分子量アディポネクチン等に対する効果、並びに、これらの効果指標とエネルギー摂取量や日常生活における身体活動量との関連について再解析を行う。これらの研究成果は、平成25年10月に開催される日本公衆衛生学会、並びに、公衆衛生学や予防医学関連の国際学会で公表する予定である。 本研究では、NWプログラムの効果を検証するため対照群(RW群)を設定した。このため、介入終了後に対照群に対してNWプログラムを提供する倫理的配慮が必要である。対照群へのノルディックウォーキング指導は、平成25年5月から6月まで、週1回の頻度で合計8回実施する予定である。 本研究の結果、6か月間のNW介入によって内臓脂肪量やインスリン抵抗性には改善が認められたが、高分子量アディポネクチンには改善が認められなかった。先行研究により、高分子量アディポネクチンの改善にはより長期間の観察が必要であることが示唆されている。そこで、平成25年度には、介入終了から1年後における高分子量アディポネクチンの変化を明らかにするため、第1期の対象者には平成25年7月、第2期の対象者には平成26年3月に血液検査及び腹部CT検査を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
費目別収支状況等に示した通り、平成24年度末の研究費の残額は約130万円である。現在までの達成度に示した通り、第2期の介入研究を平成24年10月から平成25年3月まで実施した。介入後の検査は平成25年3月に実施済みだが、検査費用の支払いは翌月のため、平成25年度に30万円を使用する。 今後の研究の推進方策で示した通り、平成25年度には国内及び国外で各1回学会報告を予定しており、旅費などで50万円を使用する見込みである。また、平成25年度は、介入研究の終了者51名に対して介入終了から1年後に血液検査と腹部CT検査を実施する予定であり、これらの検査費用で50万円を使用する見込みである。
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