2011 Fiscal Year Research-status Report
小児肥満症の改善、予防の統合研究-基礎から実践へ、エビデンスある介入を目指して-
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23500853
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
田久保 憲行 北里大学, 医学部, 助教 (20306583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正浩 北里大学, 医学部, 教授 (90222950)
鳥居 央子 北里大学, 看護学部, 教授 (10227671)
加藤 チイ 実践女子短期大学, その他部局等, 准教授 (40461785)
横山 美佐子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70439149)
大津 成之 北里大学, 医学部, 助教 (60286341)
木村 純人 北里大学, 医学部, 助教 (40365151)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 小児肥満症 / 肥満関連遺伝子 / 血管内皮機能 / 個別介入プログラム / 医療チームアプローチ / 栄養介入プログラム / 運動介入プログラム / 家族支援 |
Research Abstract |
大震災の影響から諸関係機関との調整が大幅に遅れたため、23年度は口頭と文書で同意が得られた健常児のボランティア10名(6歳~12歳、男4名、女6名)とその家族を募り、研究計画書に記載した小児肥満症への介入プログラムを作成し、健常児で試験的にプログラムを施行した。そして介入内容(測定時間、運動強度や難易度など)や安全性の検討を行うとともに、小児肥満症に対する対照群としてのデータを収集した。なお血管内皮機能評価として、血管超音波検査の他に、itamar社製EndoPAT2000を使用し相関を検討した。これら介入プログラムの内容につき、測定の困難さや測定時間、マンシェットの加圧の程度、運動の難易度や強度を検討したが、対象のどの年齢でも介入可能な内容であることを確認した。また安全面にも問題なく、被検者への身体的、精神的負担も非常に軽微なものであったことを確認した。さらに血管内皮機能につき、血管超音波検査とitamar社EndoPAT2000のデータは相関していることを確認し既報通りであったことから、測定者による誤差を少なくするためEndoPAT2000を使用して検討してゆく方針とした。なおEndoPAT2000を用いた成人のカットオフ値を用いると、今回の対象である健常小児では若干高めの値が得られる傾向にあったため、EndoPAT2000解析ソフトによる自動解析値でなく、自然対数値を求めてデータ集積、解析すべきと考えられた。運動介入プログラムに関しては、当大学医療衛生学部理学療法学科大学院生を中心に遊戯性のあるプログラムを考案し、楽しみながら体力づくりならびに、脂肪燃焼を視野に入れた有酸素系運動を組み入れた。栄養介入プログラムでは、病院で行う栄養指導とは異なった視点でバイキング形式の食事を準備し、こどもやその家族の食事への行動特性を観察し、実践的な栄養指導へ繋げる工夫を組み入れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年3月に発生した未曾有の大震災の影響から、その後の余震や夏季の節電等でさまざまな制限が生じ、安全性の面から学内の体育館等に子どもたちを集め、集団教室を開催することが困難となった。そのため上記の研究実績に記載したように、今回は昨年7月と本年3月の2回で、ボランティアの健常児を対象としたプログラムの試験的な運用に留まざるを得なかった。なお介入内容(測定時間、運動強度や難易度など)や安全性の評価を行うとともに、小児肥満症介入に対する対照群としてのデータを収集することはできた。また学内の規制により、一時必要以上の海外出張ができなくなり、さらに原子力発電所の事故による放射性物質の影響から、海外の受け入れにも一時制限が生じたために、予定していた海外視察を実施できなかった。行政との調整にも遅れが生じ、肥満検診事業で一次検診対象者となった児童への調査票による調査(調査内容は、母子手帳に記載された出生時の体格に関する記録ならびに、健診時の体格に関する記録、新生児期、乳児期の栄養法につき記載するものである。)についても実施できなかった。なお当院通院中の小児肥満症の患者に対する血液生化学的な検討や、肥満関連遺伝子の検討は進められている。また本介入研究のプログラムに対する文献的検討や、さらなる問題点の抽出とその改善策については、毎月1回研究分担者全員で会議の場を設けて検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記理由から今後は作成した介入プログラムに基づき、当初の目的の通り肥満検診事業での重度肥満ならびに、当院通院中の重度肥満患者を対象とした介入研究を進めてゆく方針とする。プログラムに関し栄養介入に関しては、引き続きバイキング形式の食事や調理実習による栄養教室の企画・運営のほか、呼気ガス分析による基礎代謝量に基づく個人に合わせた栄養指導など検討してゆく方針である。運動介入に関しては、本年度から和光大学の協力を得てムーブメント療法を取り入れることを検討する方針である。さらに看護の家族支援に関しては、小児分野のさまざまな疾患でQOL評価が検証されている「Kid-KINDLRQuestionnaire」の質問紙を用い質的解析を行い、肥満症を有するこどもとそれを取り巻く家族環境の問題点や特性を検討し、肥満改善に向けた動機付け支援のあり方を検討する方針である。なお質問紙の「Kid-KINDLRQuestionnaire」につき、その原作者と日本語翻訳者への使用許可はすでに取得している。小児肥満症患者の血液生化学的な検討や、肥満関連遺伝子の検討は引き続き行ってゆく。血管内皮機能に関しては、上記研究実績にも記載したようにEndoPAT2000で検討し、小児肥満者における血管内皮機能の特性と、動脈硬化性変化の有無を検討してゆく方針とする。市の肥満検診事業での一次検診対象者に対する調査票による調査に関しては、引き続き行政ならびに学校教育委員会と調整を図ってゆく方針であるが、昨今の個人情報保護の観点から、学校保健の範囲内での身体計測値や出生時の記録などの情報開示も困難となる可能性が生じてきており、データ自体の解析が困難となることが予想される。出来る限り、必要な情報収集に努めデータ解析に繋げたいと考える。予定していた海外視察に関しては、今後の研究の進捗状況や予算などを鑑み検討する方針とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.栄養介入ならびに運動介入に関わる必要経費(食材費、人件費や呼気ガス分析用マウスピースなど)2.看護の家族支援に関する質問紙の質的解析に関わる解析ソフト、ならびに解析用コンピューター一式3.肥満関連遺伝子解析に関わる試薬一式と、解析に関わる費用4.調査票の印刷代、郵送費5.関連学会での発表のための出張費(平成24年度は国内学会での発表予定)
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